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喫煙社員ゼロの時代へ


この 1 冊で全社員禁煙の必要性が分かる、全社員禁煙が実現する

全社員禁煙こそが健康経営の切り札だ!

著者:荒島英明  喫煙社員ゼロの時代へ
(まだ完成原稿ではありませんが、ぜひご覧頂きご批評ください。)

はじめに
ビジネスシーンにおいて、喫煙規制のあり方やタバコに対する認識には大きくは 3 つの誤りがあると思っています。
1 つは店舗などの公共施設における客のための喫煙規制と、「職場」での従業員のための喫煙規制を同等に考えるという誤り
もう 1 つは「タバコは嗜好品」という誤り
最後は禁煙は難しいという誤りです。
そして付け加えたいことがあります。それは「全社員禁煙は、費用いらずの儲かる施策」だという事です。

オリンピックを契機に公共施設における受動喫煙防止対策が罰則付きで義務化されました。受動喫煙防止対策を完全に行おうとした場合、飲食店などの不特定多数の客等に対してはバックヤードからの煙の流入防止措置・従業員の呼出煙やサードハンドスモーク防止対策を行えば「店内完全禁煙」で正解です。
ですが雇用関係でつながった特定の人が「生活し生産」する「職場」という施設では「就業時間中禁煙」に加え「全社員禁煙・喫煙社員ゼロ」がセットで行われなければなりません。そうでないと、喫煙社員本人の健康を守ることが出来ないだけでなく、喫煙社員の能力を生かし、喫煙社員の生産性を回復することも出来ないからです。
喫煙者の脳波のα波はニコチンの継続摂取により平均で 9.3Hz まで低下しています。非喫煙者のα波は平均で 10.0Hz ですので、9.3Hz というのは脳が機能低下状態、うつに近い状態であることを示しています。この機能低下はニコチン摂取による脳の異常興奮により 9.8Hz まで回復します。喫煙後 30 分ないし 60 分ほど経ちニコチンの血中濃度が下がるとα波は再び 9.3Hz まで低下して、頭が冴えない、ダルイ、何となく不安、間が持たない、集中できない、イライラする、楽しさを味わえないなどのさまざまな離脱症状をもたらします。このため脳は自らの機能を回復させ「スカッと」したい「楽しさを味わいたい」ために再びニコチンを欲します。
「就業時間中禁煙」ですとニコチンの補給が出来ませんので、だんだん我慢ができなくなります。例えるならおしっこがたまってきておまたプルプルな状態です。あなたならおまたプルプルな状態で良い企画を出せるでしょうか。事務をミスなく迅速に執行できるでしょうか。正確で迅速な作業で高い生産性を生み、不良品の発生を抑え、事故を減らすことができるでしょうか。
しかもそんな状態で何時間も我慢した後の一服はことさら美味しく、喫煙者はタバコは止められないという事を毎日毎日強く確認させられ、ニコチンの奴隷に落されるのです。職場における喫煙規制は、就業時間中禁煙と全社員禁煙・喫煙社員ゼロがセットで行われなければ正解とはならないのです。

タバコとニコチンの害が広く知られるようになってから 30 年ほど経った 2006 年に、やっと国もタバコを依存性薬物と認定し、その依存症治療のために医療費負担という財政支出に踏み切りました。科学的には覚せい剤などと同等の依存性薬物と国が認めたタバコですが、一般社会では今だに「嗜好品」として扱われています。これは覚せい剤やコカイン・アヘンなどの麻薬は嗜好品だと言っているのと「科学的」には同じなのです。現代では覚せい剤や麻薬を嗜好品という人がいたら、誰もがちょっと違うだろというのではないでしょうか。ですが過去はそうではなかったのです。

覚せい剤は第二次世界大戦中は世界中の軍隊や民間で疲労や眠気をとってくれる薬として普通に流通していました。戦後になっても一流製薬会社が製造し薬局で普通に販売され、嗜好品感覚で使用されていました。そしてその後非合法薬物に指定されたという歴史を持っています。
コカインも、昔はコカ・コーラにコップ 1 杯 9mg も含まれて「スカッとさわやか?」な感覚を強力にもたらしてくれる嗜好品として扱われていました。そしてその後非合法薬物に指定されたという歴史を持っています。
アヘンも昔はイギリスの輸出商品で、それを輸入禁止にした清国に対し戦争を仕掛ける程の重要性を持ったものでした。そしてその後世界中で後非合法薬物に指定されたというのはご存知の通りです。
江戸時代の日本ではタバコは南蛮渡来の高級な薬だと認識されていました。今では薬どころか約70 種類もの発がん性物質を含む依存性薬物と分かっています。
ですがタバコは、ニコチンという覚せい剤や麻薬と科学的には同等の依存性を持つ危険な薬物を含みながら、現代に至っても嗜好品とされ、いまだに非合法薬物と認定されずにいます。そして喫煙を規制しようとすると、「庶民の娯楽を奪うな」「多様性を認めない偏狭な考え」「多様な人々の気持ちをもっと尊重すべきだ」「自分だけが正しいと妄信する嫌煙ファッショだ」という声が一部では上がったりします。少量なら良いところもあるといわれるアルコールとは違い、タバコは青酸カリの 2 倍も強力な毒物であるニコチンを含み、煙は PM2.5 の発生源であり、そこには発がん性物質などを多く含み、何年たっても再喫煙してしまうという、他の麻薬に比べて最も高い依存性を持つ、とても危険な薬物=合法的な麻薬なのです。

タバコは嗜好品という認識の誤りを正し、「止めた方が良い」から「私生活でも禁止」へと一歩踏み出すべき時です。

一般的には禁煙は難しいと認識されています。確かに、「禁煙頑張るぞ」「今度こそ何とかして禁煙するぞ」と意気込んで禁煙に挑戦した場合の成功率は数%と言われています。禁煙外来に行って禁煙しても成功率は、一部の例では 2 割程度であったりします。それ見ろ難しいじゃないかとおっしゃりたいのは無理もありません。ですがそれは「禁煙頑張るぞ」と意気込んで禁煙に挑戦した時のデータです。

禁煙の方法には2種類あります。一つは「頑張る禁煙」もう一つは「楽しむ禁煙」です。その二つを分けるもの、それはタバコに対する認識の違いです。
「頑張る禁煙」はタバコという少し癖はあるが良い奴と二度と会えなくなるのはツラいけど何とか我慢する。頑張って耐え続けるぞ、という禁煙方法です。
「楽しむ禁煙」はタバコなんてあんな性格の悪い嫌な奴と会わなくてすむなんてうれしい、これからの生活が楽しみだ、という気持ちになって禁煙する方法です。
「楽しむ禁煙」を知り、タバコの呪縛から離れた人にとっては禁煙は簡単なことであり、さらに加えて会社が施策として禁煙を呼びかければ、企業方針という圧力とサポートがあるため、極めて楽に禁煙出来ます。企業は喫煙社員を、ニコチン奴隷から一刻も早く解放してあげるべきです。

加えて申し上げたいのは「全社員禁煙は、費用いらずの儲かる施策」であるという事です。費用を掛けないで、おまたプルプル喫煙社員がスッキリして働けるようになり生産性が上がりメンタルヘルスが改善し、離職率や欠勤が減り、ガンや呼吸器疾患などの疾病も減る。企業イメージが上がり商談でも採用でも優位に立てる。「全社員禁煙・喫煙社員ゼロ」は費用を掛けること無くそうした沢山の成果を企業にもたらしてくれます。

この本は全社員禁煙・喫煙社員ゼロこそが、健康経営においてまた社員の健康にとって最も重要であるという事と、全社員禁煙を簡単に実現させる方法の 2 点に絞って書かせていただきました。
すでに取り組まれた企業の実例を見ると、全社員禁煙は意外なほどあっさりと実現しています。全社員禁煙化に取組もうと考えている企業はまだほんの一握りですが、喫煙者の減少、特に若年層での喫煙者の減少を見れば、全社員禁煙に取り組まない企業はやがて学生からそっぽを向かれ、採用市場から淘汰される可能性すらあると思っています。この本が、あなたの会社が全社員禁煙に取り組み、社員の健康と企業の利益を増大するための手助けとなれば幸甚です。

1章ー1 全社員禁煙は企業の責務である
     健康経営で最も重要なもの
     タバコを止めさせるのは経営者の義務
     これは社会貢献事業
     2 つの労働条件
     過去の遺物はさっさと撤去
     休憩廃止だけでは蛇の生殺し
     企業のイメージアップ戦略 採用戦線も有利に
     怠惰を保証するのは罪
     喫煙が与える多大な損害
     訴えられる可能性を無くそう
     賃金アップがタダで実現
      嵌るメカニズム
      脳を正常化させよう
      クリーンで生き生き働ける職場
      ちょっと一息 小話コーナー  子供は楽しい 老人は悲しい

1章ー2 全社員禁煙は簡単です
      真実を知れば止めたくなる
     みんなが望んでいる
      我慢せずに楽しむもの
      喫煙の害を知らせたいの?
      企業だからこそ可能
      業務改革よりもずっと簡単
      企業実例 株式会社ネクステージグループ
      企業実例 ティーペック株式会社
      企業実例 アクロクエストテクノロジー会社
     ちょっと一息 小話コーナー エネルギーの黄昏

1 章ー3 合法麻薬タバコの危険性とは
     タバコは未認定の麻薬 いわば合法麻薬
     吸った人の三分の一が依存症に
     タバコは青酸カリの 2 倍の猛毒
     ニコチンは毒物、PM2.5、発がん性物質のデパート
      死者数は交通事故の 4 倍

1章ー4 喫煙社員の苦悩
     喫煙場所はどこ?
     ストレスの無限ループ
     タバコと幸せはワンセット
     ちょっと一息 小話コーナー 男はきれい、女は地味

2 章−1 社員の喫煙状況や考えを知ろう
     どんなアンケートにする?
      必要な項目を考えよう
     こんなことも聞いてみよう
      質問をして考えてもらおう

2 章ー2 禁煙しやすい環境を整えよう
      就業時間中は禁煙に
     昼休みも外回り中も
     喫煙室撤去を宣言しよう
     健康手当支給を宣言しよう
     喫煙者不採用を宣言しよう
     色々な手段を使って広報しよう
     ちょっと一息 小話コーナー 人類の黄昏

2 章−3 イベントで関心を引こう
     運動を始めよう
     全体のイメージを見てみよう
     アイデアや愛称などを募集しよう
     禁煙ニュースなどで学習と情報共有
     ありがとうカードを渡そう
     3 週間禁煙達成を祝おう
     ちょっと一息 小話コーナー 子供はかけっこ 大人は金持ち

2 章ー4 タバコが必要ない人になってもらおう
     ちょっと一息 小話コーナー A さんの禁煙ミニドラマ
     「関心」がキーポイント
     最後は雪崩のように
     苦しまずに出来るんです
     タバコの詐欺師は 3 週間で消える
     自分で考えてもらおう
     合格率が上がった!

2章ー5 挑戦者をみんなで支えよう
     支える体制を作ろう
     3 週間禁煙した人にはメンターになってもらおう
     ランチミーティングでゴールを目指す
     家族に禁煙サポーターになってもらおう
     抵抗が起こらない対策
     女性特有のサポートを
    ちょっと一息 小話コーナー キリスト教文化の黄昏

3 章−1 達成後の継続が重要です
    盛大に祝おう
    いつまで経っても禁煙中
    新たなフェーズへ
    資料 喫煙の健康影響に関する検討会報告書抜粋
    ちょっと一息 小話コーナー オシドリ夫婦は浮気夫婦

参考文献

1 章ー1 全社員禁煙は企業の責務である

健康経営で最も重要なもの
健康経営という言葉が日本で少しづつ知られるようになってきました。
健康経営は日本では経済産業省が中心になって提唱している経営手法で、経済産業省の定義 では従業員等の健康管理を経営的な視点で考えて、戦略的に実践することとされています。
一般的には健康経営の目玉はメタボ対策とメンタルヘルス対策です。
ですが社員の健康にとって真に重要なのは社員の禁煙化です。

初めに認識していただきたいのは、タバコは覚せい剤や麻薬と同程度かそれを上回る悪質性 を持った依存性薬物であるニコチンを含む、言わば合法的な麻薬とも言えるものだという事 です。
その点で社員の禁煙化はメタボやメンタルヘルスと同じ次元で語ることは出来ません。
しかも社員の禁煙化は健康経営で取り組むべき施策のなかで、最も即効性があり、効果が数 字ではっきりわかり、費用対効果が最も高い施策なのです。
それなのに経済産業省は社員の禁煙推進=タバコの消費減少については、財務省に遠慮して いるのか、ヘルスケア産業の創出につながらないためなのか、強く触れていない事は残念で す。
メタボやメンタルヘルスについては法の定める対策はもちろん必要ですが、企業がこれから 健康経営に取り組もう、社員の健康を大事にする施策を行おうとお考えなら、重点を置いて 一番に手掛けるべきは全社員禁煙をおいてほかにはありません。

喫煙者=ニコチン依存症患者は脳が機能低下しており、それは鬱に近い状態です。
そのために頭がさえない、やる気が起きない、集中できない、何となく不安、楽しめない等 多くのストレスを抱えています。
それはまさにメンタルヘルスの不調であり、ニコチン依存症患者を減らすことは同時にメン タルヘルスの改善にもなる事を示しています。
また喫煙率、特に若年層での喫煙率が低い現状、そして先進的な企業が社員の喫煙問題に積 極的になりつつある状況では、社員の喫煙問題に手を付けないことは学生などから「社員の 健康に配慮していない」企業とみなされる恐れもあるのです。

タバコを止めさせるのは経営者の義務
社員が、青酸カリの 2 倍の毒物であるとともに覚せい剤と同じような依存性を持ち、脳を機 能低下状態にさせる薬物を日常的に摂取していると聞いても、「出来れば止めましょうね」 で済ませる企業があるとしたらどう思われるでしょうか。
それだけ聞けば多くの方は「それはまずいでしょう」と思われるはずですが、現実的には多 くの企業では社員の喫煙に対してはそのような対応をされています。
大企業を中心に就業時間中は禁煙とする企業が多くなってきていますが、通勤中や就業後は 「私生活」として、「禁煙したほうがいいですよ」というお勧めにとどまっています。

終業後は私生活であることは確かですが、青酸カリの 2 倍の毒物であるとともに覚せい剤と 同じような依存性を持ち、脳を機能低下状態にさせる薬物を社員が日常的に摂取することを 社員の自主性に任せることが本当に正しいのでしょうか。
それが正しいというのならばメタボなどの生活習慣に会社が関与すべしという国の労働政 策との整合性は取れるのでしょうか。

メタボなどの生活習慣の改善に取り組むという事は必然的に私生活に立ち入るという事で す。
メタボなどの生活習慣は例えば食べすぎとか塩分を抑えるような指導ですが、それらはあく までも生きてゆくのに必要な栄養素を取りすぎるとか不足しているとか言う問題ですが、タ バコは生きてゆくのに必要などころか言ってしまえば毒と害の塊のようなものです。

ですからメタボは「お願い」でも済みますが、喫煙は毒物であり危険な薬物の摂取ですので「命令」してでも止めさせるべき事柄です。
もし社員が私的な時間に覚せい剤を吸ったとしたら、それは懲戒の対象になるでしょう。
社員が、本人の健康に大きな影響があるばかりか、脳を機能低下させる事で業務能力を下げ、業務中もタバコが吸えないストレスで仕事に身が入らないようにさせる。そうした依存性薬物を摂取しているのが分かっていながら私的な時間だから干渉しないという事は、企業の生産性向上はもちろん、社員の安全と健康を守るという会社の役割を放棄していると言わざるを得ません。
たしかに就業時間中禁煙という会社の方針をきっかけに禁煙率は 5〜10%減少しますので、 就業時間中禁煙だけでも一定程度は社員の健康を守るという役割をはたしているというの は間違いありません。
ですが、全ての社員を私生活も含めて禁煙させることが、この時代においては企業の義務、 経営者の義務ではないでしょうか。

これは社会貢献事業
社員を禁煙させる事は社会貢献事業でもあります。
放火を除くと火災原因の第 1 位はタバコです。社員の禁煙はタバコによる火事を減らし、市 民の安全と財産を守ることに貢献します。
タバコによる年間 2 兆円にのぼる経済損失の減少に貢献します。 厚生労働省の資料ではタバコによる経済損失は年間4.3 兆円、対してタバコの税収は 2.1 兆 円、差し引きの損失は年間 2 兆円以上と見込まれています。
疾病の罹患が減り、国民の健康増進に貢献し、国や自治体の医療費負担を減らすことに貢献 します。
副流煙被害により交通事故死者の 4 倍以上にあたる毎年 1.5 万人が「殺されて」います。そ の被害の減少に貢献します。
社員による路上喫煙がなくなり、通行人を煙害から守り、子供たちの顔や目の火傷の被害を 減らすなど市民の安全と健康に貢献します。
道路の吸い殻が減り、吸い殻で街を汚すという問題解消に貢献します。
タバコの煙は PM2.5 です。PM2.5 による健康被害の減少に貢献します。
副流煙から子供など家族の健康を守り、子供のタバコの誤飲被害を減らすなど、家庭内にお ける健康被害の減少に貢献します。
ベランダや庭先、レンジフード下での排気しながらの喫煙などがなくなり、近隣の副流煙被 害の解消に貢献します。
周りの人の副流煙被害、サードハンドスモーク被害を減らすことに貢献します。
喫煙者は善意の隣人ではありません。
本人は悪くないと思っていたとしても周りの人に様々な迷惑、被害を与えています。
社員に喫煙をさせないという事は様々な形で企業の社会貢献となるのです。

2 つの労働条件
当社の社長はテニス好きなので、テニスが好きな社員なら業務中好きな時にテニスを楽しむ ことができます。それ以外の人は昼休み以外は休めません。
そんな非常識な企業はまずないでしょう。ですが次のような例はどうでしょう。
当社は喫煙者であれば規定以外の時間に自由に休憩してかまいません。休憩中は上司や同僚 との打ち解けた時間も共有できるかもしれません。ですが喫煙しない人にはそんな自由な休 憩時間はありません。この二つには給与や昇進に何の違いもありません。自由にお選びくだ さい。
こういう冷静に考えればおかしなダブルスタンダードを取っている企業はたくさんありま す。
もし採用担当が就活生にこんなおかしなダブルスタンダードのことを言ったらどんな反応 をするでしょうか。自由に休めるならタバコも良いなと思うかもしれません。

社員の健康不良=ニコチン依存症の治療に真剣に取り組まないばかりか、その疾病を温存す べく自由に休ませ喫煙させてあげる、喫煙すれば自由に休めるとして実質的に喫煙を奨励する事は社員に対するやさしさなのでしょうか、
本当に社員のためを思った施策なのでしょう か。 それは労働安全衛生法の精神に合致しているのでしょうか。
ニコチン依存症の治療に取り組むよう指示する。そして社員の禁煙を全社を上げて全力でサ ポートする。
それが本当に社員のためを思った施策、企業がとるべき施策なのではないでしょうか。 しかも禁煙は簡単なのですから。

過去の遺物はさっさと撤去
昔は喫煙休憩はありませんでした。
ではその後どうして喫煙休憩などという間違った慣習が できてしまったのでしょうか。
その原因は皮肉なことに「嫌煙権」の高まりです。

1970 年代までのオフィス、特に会議室などは部屋の端が霞むほどひどい煙りが充満してい ました。
そして「健康に悪いからタバコを我慢しましょう」と思う喫煙者は見かけませんで した。
男性社員の90%程が喫煙者であったため、トップを含めた喫煙者(主に男性)は「ふざけ んな、煙が嫌やなら会社を辞めろ」「タバコ吸いながら仕事するのは常識だろ、お前ってホ ント非常識だよな」「お前は本当に神経質な女だよな、嫌われんぞ」という嫌がらせや嘲笑 により少数者(そのほとんどが女性)の抗議は無視され強引に抑え込まれ続けました。
それは本当にひどい状況で、今なら完全なパワハラです。

その当時に喫煙のために席を離れ室外で喫煙したらあまりにも明確なサボリ行為として処罰されたでしょう。

煙が嫌だという少数者による弱々しい戦いが 20 年以上も続きました。
そして社会全体に 徐々に広がる煙は嫌という声、タバコには害がありそうだという研究がいくつも発表される、 禁煙車両の登場などの社会的な包囲網により喫煙社員は徐々に追い込まれてゆきます。
余裕のある企業では喫煙時専用の事務スペースを作り、吸いたくなった社員はその部屋に移 動してそこで吸いながら仕事をするような措置をとったところもあったようです。

ですがそんな余裕のある企業はほとんどありません。 嫌煙意識の高まりとともに在席で吸えない雰囲気となったため、緊急避難として仕事を放棄 して室外で吸う事を企業も黙認せざるを得なくなりました。
本来はそこで業務中禁煙を強制すべきでした。
ですが当時の男性労働者の喫煙率は 80%と極めて高く、企業は業務中禁煙の強制を初めか ら放棄し室外喫煙というサボリを黙認したのです。
これが離席してサボる喫煙休憩の始まり です。
トップも上司も自分が吸いたいので、部下のサボリを注意しません。
煙が嫌だと思っていた人も、煙を吸わなくて済むようになって安心したし「勝利を手にした」 感覚を味わうことが出来ました。
そこで「サボリだ」と注意をしようものならまた逆切れするのは確実ですので、非喫煙社員 もサボリ行為を注意する事はできませんでした。
そんなおかしな状況で喫煙者だけが休憩時間以外にも好きな時に休める、堂々と職務専念義 務に違反するという、おかしな既成事実が広がっていったのです。

「職場を追い出されて外に行かざるを得なくなった迷惑行為」がいつの間にか「いつでも休める喫煙者の権利のような怪しいもの」へと変わってしまったのです。

ですがこの悪しき慣習=緊急避難は社会状況の変化や喫煙率の減少により、すでに過去の遺物となっています。
すでに不要となった緊急避難=時限措置をこれからも維持し、守ってゆこうというのはまさしく愚の骨頂です。
喫煙休憩による不平等を解消すべく、今更完全に隔離された喫煙者用専用喫煙オフィスと非喫煙者専用禁煙オフィスを設置してそれぞれのスペースに分離して働かせるのでしょうか。
社員の不健康=ニコチン依存症治療に真剣に取り組まないばかりか、その疾病を温存するかのように自由に喫煙させてあげる、喫煙休憩などという労働安全衛生法の精神に反する行為、過去の遺物を温存すべきではありません。

休憩廃止だけでは蛇の生殺し
喫煙者は喫煙後 30 分〜60 分でニコチンの血中濃度が離脱症状発現レベルとなり、頭が冴え ない、ダルイ、間が持たない、集中できない、何となく不安、イライラするなどのさまざま な離脱症状が現れ、脳はニコチンを欲します。
そのままニコチンが入ってこないと離脱症状はますますひどくなります。
例えていうならおしっこを我慢しておまたプルプルな状態です。
タバコが吸いたくてたまらない=おしっこたまっておまたプルプル。タバコを吸えない=ト イレに行けない。

受動喫煙対策で「就業時間中禁煙」「喫煙所・灰皿撤去」だけですましてしまうと、例えるならおしっこを我慢しておまたプルプルな状態で仕事をさせている事になります。
あなたならおまたプルプルな状態で良い企画を出せるでしょうか。事務をミスなく迅速に執行できるでしょうか。正確で迅速な作業で高い生産性を生み、不良品の発生を抑え、事故を減らすことができるでしょうか。

多くの企業では「就業時間中禁煙」にした後は禁煙外来受診費の補助や禁煙カウンセラー紹 介や研修会等の施策を行いますが、それだけでは残念ながら多くの社員が喫煙者として残る ことになります。
是非、全社員を禁煙まで持ってゆく、もっと積極的な施策を取られるよう願ってやみません。

怠惰を保証するのは罪
人材は企業にとって重要な経営資源です。
優秀な人材にたくさん集まってもらえて、多数の応募者の中からより良い人材を選ぶことが できる。 だれもが憧れて応募してくれる企業であり続ける。
社員が働きやすい労働環境・職場を作り 続けるのは企業にとって重要な事です。
ですが社員が働きやすい労働環境・職場を作るとは言っても優秀ではない社員ばかりが残る 会社、悪貨は良貨を駆逐するような会社では、企業は生き残ってゆけません。

今以上の貢献をしようとしない社員の安泰を守る職場、仕事に支障のある生活習慣を変えな くても何も言われない職場、そんな職場を保証することも本末転倒な事です。
就業中は会社に積極的に貢献しようと努力する人を大事にする、そうなるように努力させる のが正しい方針なのではないでしょうか。
喫煙休憩をあたかも権利であるかのように思い違いをしている社員、喫煙休憩は喫煙者同士でコミュニケーションが取れて有意義な場だなどと信じている社員、脳を機能低下させる薬 物を止めようとしない社員の安泰を保証するのは間違いです。
喫煙社員に、ニコチンの牢獄から抜け出し生産性を上げる努力をさせる役割が、企業にはあ ると思います。

喫煙が与える多大な損害
企業で、喫煙に関して誰でもわかる問題は喫煙休憩という喫煙者だけの特別休暇です。(ト イレやお茶や世間話は非喫煙者でなくても全社員共通なので、それらとごちゃまぜのおかし な議論は止めさせましょう。)
喫煙者だけの特別休暇は年間では平均で 150〜200 時間ほどにもなり、20〜25 日間の年休に 相当します。
別の見方をすれば喫煙社員 8 人と非喫煙社員 7 人の実労働時間が同程度という事になって しまうのです。
そして喫煙休憩を禁止して就業時間中は喫煙できなくしても、私生活で喫煙していれば脳機 能の低下は改善しませんし、それによる生産性の低下や高い疾病率などの問題は今までと変 わらずに残ります。
喫煙がもたらす鬱や疾病などにより離職率が高まると、応急的な採用活動が必要となり、要 求水準に達しない人も採用せざるを得なくなり、そのことがさらにほかの弊害をもたらすと いう悪循環を生みます。  
すでに全社員禁煙を達成してそれを採用でも打ち出した企業はそれ以前と比べてはるかに 優秀な人材の確保に成功していますし離職率も低下し、そのことで採用活動も落ち着いて行 え、優秀な人材が採用できるなど好循環が生まれています。
喫煙室がある場合はその分の賃料・減価償却・清掃等の維持管理費も大きな負担です。
そのほか医療費負担の問題もあります。
タバコ代に年間で 12 万円ものお小遣いが使われていることも実質的な収入減として勤労意 欲に影響します。
企業は喫煙が与えるそうした損害を放置すべきではありません。

訴えられる可能性を無くそう
労働安全衛生法により企業には労働者の安全と健康を守る義務があります。
改正健康増進法でも受動喫煙の防止が罰則付きで義務付けられました。
会社が受動喫煙の防止対策をほどこさなかった結果、社員が肺がんなどの重大な病気にかか ってしまった場合には、安全配慮義務違反の責任を追及されるおそれがあります。
このため就業時間中禁煙などの措置が必要なのですが、それだけでは非喫煙者の健康は守れ ても喫煙者の健康は守れないという問題が残されてしまいます。
就業時間中禁煙により通常は喫煙率が 5〜10%下がりますので、有効な施策であることは事 実です。
ですが、それでも多くの喫煙者はタバコを手放せないで立ちすくんでいます。

喫煙により脳の機能低下が起こり、そのために頭がさえない、何となく不安、やる気が起き ない、楽しめない等喫煙社員は多くのストレスを抱えています。もちろん高い疾病率も存在 しています。
こうしたストレスを抱え鬱に陥った社員、高い疾病率のまま残された社員から、タバコの危 険性を認識しながら十分な禁煙施策を取らなかったと安全配慮義務違反の責任を追及され、 慰謝料を請求されるおそれもゼロとは言えません。
喫煙社員のストレスを無くすには 30 分ないし 60 分ごとに喫煙させるか、完全に禁煙させて 脳の機能を回復させてあげるかの 2 つに一つです。 30 分ないし 60 分ごとに喫煙させるのは時代の要請からはかけ離れた施策ですし、喫煙者と 非喫煙者の休憩差別であり、喫煙者の生産性の悪化要因、喫煙者と非喫煙者の対立・チームワークの悪化要因でもあります。

喫煙者の健康を守る根本的な対策は1つだけ、「禁煙させて脳の機能を回復させる」事です。
就業時間中禁煙にして非喫煙者の健康を守り、喫煙者を卒煙させて脳の機能を回復し健康を 取り戻させてあげる。
それこそが社員の安全と健康を守るべき企業のとるべき対策であるし、安全配慮義務違反を 追及されるおそれを無くす施策でもあります。

賃金アップがタダで実現
たばこ 1 箱が 500 円として月 20 箱で 1 万円、年間で 12 万円のタバコ代が煙になっていま す。
しかもだいぶ迷惑で困った煙です。
喫煙をやめれば年収 300 万円の社員にとっては 4%の賃上げ、年収 500 万円の社員にとって は 2.4%の賃上げに相当します。
デフレ脱却がままならないご時世ではこれは大きな数字です。
しかもタバコを止めれば実質所得増加の他にも良いおまけがいっぱいついて来ます。
本人は健康になる、家族の健康被害がなくなる、年間死亡者数 1.5 万人という受動喫煙被害 がなくなる。(ちなみに交通事故による死者数は年間で 0.35 万人です。)
医療費が削減でき る。
ベランダ喫煙によるご近所への迷惑がなくなる、路上喫煙による被害・路上の吸い殻がなく なる、店舗等での PM2.5等の煙害がなくなる。
プレゼンティズムが改善する、うつ病が減る、生産性が上がる、ミス・怪我・事故が減る、 喫煙スペースの管理・維持費がなくなる。会社のイメージが上がる、採用で有利になる。等々
社員の実質的な大幅賃上げがタダで実現し、さらにオマケがいっぱいついてくる。こんない いことずくめな施策はめったにありません。

企業のイメージアップ戦略 採用戦線も有利に
「社員の健康を大事にしている会社」との評価は企業イメージの向上にとって非常に重要で す。
「ブラック企業」と指弾され売り上げが激減した居酒屋チェーンの例などを見ればそれは歴 然です。
企業イメージが向上すれば社会の評価も株価も商談も採用にも良い影響をもたらしますし、 親も働く社員も会社に誇りを持て、定着率も上がります。
定着率の上昇は採用経費を削減させますし、必要人数の減少と応募者の増加は、より優秀な 人材の採用を可能にしてくれます。
新卒採用でも実際に全社員禁煙を達成し、社員の健康を守ること、喫煙者は採用しないこと を打ち出した企業は、今までよりも格段に優秀な人材が応募してきています。
青酸カリの 2 倍の毒物であり、覚せい剤などと同じ依存性を持ち、脳を機能低下させて、や る気も楽しさを味わう力も奪ってしまう薬物を日常的に摂取するという異常な状態から、す べての社員を救い出したという事は、企業としては誇るべきことだと思います。
全ての社員が路上喫煙やポイ捨てベランダ喫煙などで住民に迷惑を掛けなくなったという 事は企業としては誇るべきことだと思います。
全社員禁煙に取り組み、企業イメージのより一層の向上を目指そうではありませんか。

嵌るメカニズム
タバコが美味しいと言っている人に、生まれて初めて吸った 1 本は美味しかったかと聞けば 皆さんマズかったというでしょう。
中には吐き気や頭痛を感じた人もいるかもしれません。
ですが大人ぶって仲間に付き合って吸っているうちに「うまい」と思うようになります。
すると今までは仲間がくれるので吸っていた人も、自分で買って吸うようになります。
この「うまい」と感じた時が、ニコチン依存症患者が誕生した時です。
こうなったらその人はタバコを手放すことはできません。
こんなうまいものを止めるなんてできないよ。タバコのおいしさを知らないやつは人生の半 分を損してるね、とまで思う人もいるくらいです。

最初はまずかったのになぜ急にうまくなったのか。
なぜ手放せないものと感じるようになっ たのでしょうか。
その秘密を探るためにタバコを吸った時の脳の活動を見てみましょう。。(「禁煙学・日本禁煙学会編 南山堂」より)
初めてタバコを吸う前の脳の活動は正常です。
初めて吸った時、脳内報酬系はニコチンの作用により多量のドパミンやノルアドレナリン、 セロトニンなどの放出にさらされ、過剰興奮します。
これが、中には吐き気や頭痛を感じる人もいるという理由です。
喫煙が繰り返されると、脳はそのたびにドパミン等による過剰興奮にさらされます。
そんな状態で脳の活動を正常に保とうとすると大脳辺縁系のドパミン受容体等を減らさざるを得なくなります。
その結果、ニコチンが減った状態では脳内報酬系が機能不全に陥ってしまい、頭が冴えない、 ダルイ、間が持たない、何となく不安、集中できない、イライラするなどのさまざまな離脱 症状が現れます。
同時に脳内報酬系が機能低下に陥ってしまった結果、ニコチンがないと十分な快感が得られ なくなり、食事してもおいしく感じにくくなります。
そんな状態のときにニコチンが入ってくると多量のドパミン等により脳内報酬系の機能低 下が一時的に解消され頭がすっきりする、うまい、楽しかったと感じられます。
その快感が繰り返されると喫煙は生活習慣に深く組み込まれ、タバコなしでは生きられない 生活になります。

実はニコチンはヘロインなどほかの麻薬と違いそれ自体には中枢神経への報酬効果はあり ません。
喫煙による報酬と感じられるものは実はニコチンによる機能低下が回復する感覚だけなの です。
つまりニコチンは自らの効果で脳を機能低下させておきながら、一時的に機能低下を回復さ せて、その回復だけをもって報酬と誤認させ実は何も報酬を与えない、まさしくマッチポン プという、極めて悪辣な奴なのです。
さらに危険なのは「報酬提示の即時性」です。
喫煙という形のニコチン摂取は他の麻薬に比 べても、そして静脈注射による投与に比べてさえも格段に早く作用します。
このような「報酬提示の即時性」がある薬物はその摂取行動が非常に強化されるという性質 を持っています。
その点でもニコチンは覚せい剤や他の麻薬に比べても最も止めにくい依存性薬物なのです。
もう一つニコチンには「間欠強化」という作用があります。
同じ依存性物質でもアルコールなどはそれ自体が快感覚をもたらす作用があるので飲めば 必ず報酬として認識されますが、ニコチンはダルイなどのニコチンによる離脱症状があると きのみ報酬として認識され、ニコチンの血中濃度が一定以上あるときに摂取しても報酬と認 識されません。
このような作用を「間欠強化」と呼びますが、「間欠強化」を持つ薬物であるニコチンに依 存した場合は何十年経っても喫煙衝動が消えないのです。
この面からもニコチンは覚せい剤や他の麻薬に比べて最も止めにくい依存性薬物なのです。

脳を正常化させよう
「禁煙学」(日本禁煙学会編 南山堂)から脳内の反応を見ることにしましょう。
人の脳波のα波は平均で 10.0Hz ですが、ストレス状態や気分が落ち込んでいるときは 8〜 9Hz の slowα波が大量に出現します。
非喫煙者の脳波のα波は平均で 10.0Hz なのに対し、喫煙者の脳波のα波はニコチンの継続 摂取によりドーパミン受容体等が減ることで平均で 9.3Hz まで低下しています。
これは slowα波の出現によりストレス状態にある、気分が落ち込んでいる、脳が機能低下 している状態と同じです。
このように大脳辺縁系ではドーパミン受容体等が減りますが、中脳では反対にニコチン性ア セチルコリン受容体が増加し、ニコチンへの反応が鋭敏となり、タバコを強く欲するように なります。

こうしてニコチンが入らないと大脳辺縁系の脳内報酬系が機能不全になり、そして中脳はニコチンを 強く欲し、ニコチンなしでは生活できない、そんなニコチン依存症患者が出来上がるのです。
一度機能低下した脳では、喫煙によるニコチン摂取で過剰興奮してもα波は平均で 9.8Hz ま でしか回復せず、非喫煙者のα波平均 10.0Hz まで回復することはありません。

喫煙をやめれば 3 日後には脳内報酬系の機能不全はかなり回復し、3 週間後にはほぼ正常と なります。
さあ早く喫煙社員をニコチン依存症から抜け出させてあげ、脳波を正常に戻してあげましょ う。  

クリーンで生き生き働ける職場
受動喫煙がないクリーンな職場で働けることは素敵ですね。
社員みんなが禁煙すれば、喫煙者だった人も脳の機能低下がなくなり本来の能力が発揮でき 正しく評価されます。
別の見方をすれば今まで非喫煙者と同等と評価されていた喫煙者であれば、禁煙に成功すれ ば非喫煙者よりも高い評価を受けることが出来るという事であり、喫煙社員は潜在的なアド バンテージを持っているという事でもあります。

脳の機能低下がなくなり、うれしいことをうれしいともっとはっきり感じられて生き生き働 ける。
喫煙休憩などで喫煙社員と非喫煙社員の利害が対立する事もなくなり、喫煙者だけの喫煙室 コミュニティーといういびつなものもなくなりチームワークも良くなることで生産性も上 がる。
あと 1 時間たてば終業時間になる、タバコが吸えるなどと切ない気持ちで働き続けるとい う苦痛からも解放される。
お客さんに自分のタバコの臭いが分かってしまうのではないかとびくびくすることもなく なり、堂々と接客できる。
外回り中に喫煙できる場所を必死に探すような、つらい思いをする社員もいなくなる。
子供や家族から禁煙してと言われて、分かってはいるけど止められない、悲しい気持ちにな る社員もいなくなる。
ベランダや庭先で吸って近隣から嫌がられる。そんな肩身の狭い思いをする社員もいなくな る。
タバコ代に消えていたお小遣いももっと有効に使えるのもうれしいですよね。
全社員禁煙という社員の健康に配慮したクリーンなイメージで高い評価をうける企業で働 けるのもうれしいですよね。
就活生に「当社は全社員禁煙のクリーンな職場です」と言えるのも誇らしいです。
そして優秀な新人が入ってきて、有能な人と一緒に働けるのも気持ちがいいですよね。
さあ就業時間中禁煙で、しかも全社員がタバコを 1 本も吸わないそんな職場作りを始めま しょう。
きっと素晴らしい生活が待っています。

ちょっと一息 小話コーナー  子供は楽しい 老人は悲しい
子供はいいですよね。いつも楽しそうにはしゃいで飛び回って、好奇心旺盛でいつもニコニ コしています。
それに引き換え大人や老人は深刻そうな顔をしてたり、つまらなそうだったり、1950 年生 まれの老人としては自分の事はしっかりと棚に上げて、どうにかならないのとか、なんでそ うなるのとか思ったりします。

それで、考えたら当たり前なんですね。
子供は楽しい、老人は悲しいって。
胎児なんかもっと楽しいでしょうね。
生き物は栄養を取り、増殖・繁殖することが基本ですよね。
増殖・繁殖できればうれしいし、数が減れば落ち込みます。
胎児や子供はどうでしょう。 1 つだけだった細胞があっという間に 2 つになり、 4 つになり、 何億になり、どんどん増殖しています。
生物としてはそりゃあ楽しいですよね。ただ食っちゃ寝してれば増殖するんですから。人生 満喫です。

やがて青年になると細胞はもう増えません。困りました、もう食っちゃ寝しているだけでは 楽しくありません。それどころかそこはかとなく悲しくなります。将来が不安になります。
人生における苦悩の始まりです。青春の蹉跌です、哲学です、人生とは何ぞやです。
細胞数が増えない予感、それだけで人は悲しくなり、ついでに詩などを書いてみたり、ギターを弾いてみたり、人生などを語り、哲学者にもなれるのです。
そんな苦悩の中にあった青年に素晴らしいアイデアがヒラメキました。
詩を捨て哲学を捨てて青年はおめかしして家を出ます。書を捨てよ街に出よなのです。
青年は必死に繁殖相手を探し回ります。派手な化粧をしたり、中には乱暴して力を示そうと するバカも出てきます。
なんせ性ホルモン出まくりですから、繁殖命ですから、なんでもありです。

やがて閉経したりなんやらで増殖も繁殖も絶望的になります。
さらにひどい事に背が縮んだり、明らかに細胞が減ってる実感がもたらされます。
人生初体験。増殖も繁殖もしないだけならともかく細胞が減ってゆく実感ですよ。
増殖ではありません「減殖」ですよ。ひどいじゃありませんか。お迎えの予感が漂います。
これじゃ誰だって悲観に暮れるというものです。

それでもあきらめきれない人は孫に期待したりします。
増殖・繁殖という生物の原理原則にどこまでも執着します。
それは孫に対する愛なのでしょうか繁殖という欲なのでしょうか。
ちなみに仏教では愛とは執着であり欲です、そして欲とは執着であり愛なのですが。 そんなことはともかく、子供は楽しい、老人は悲しく、消え去るものなのです。お迎えの予 感がするのです。

1 章−2 全社員禁煙は簡単です

真実を知れば止めたくなる
勤務時間中禁煙で十分でしょ、私生活まで禁煙を強制するなんておかしいでしょ。
パワハラ じゃないですか? 私はタバコが美味しいから吸っているんです。私がとても大好きな嗜好品を私生活でも吸う なというのはいくら何でもやりすぎです。
と本気で思っている人がいる状況では全社員を非喫煙者にさせることは難しいでしょう。
この問題を克服できるかどうかが全社員禁煙達成のカギとなりますが、実はそう難しいこと ではありません。

これを克服するためのポイントは 2 つあります。
一つは喫煙者がタバコに抱いている錯覚を解くこと。
そのためには喫煙者がびっくりするような、信じたくないと感じるような、タバコの真実の 姿を教えて衝撃を与えると良いのではないでしょうか。
例えばタバコでリフレッシュできる・タバコは美味しいなどの感覚がすべて錯覚であり、タ バコがもたらすものは実はそうした感覚とは正反対の作用であることを分かってもらう。
禁煙するというのは、大好きな嗜好品を無理に奪うのではなくタバコを必要と感じない、タ バコを吸うことが馬鹿らしくなって、本人が進んでタバコを捨てるという事だと知ってもら う。
そして企業が禁煙を勧めるのは、社員が健康になり人生をもっと楽しめ、持っている能力を もっと発揮して高い評価を得られるようにしてあげたいんだという事を分ってもらえば良 いのです。

もう一つはタバコをやめる気がない人に禁煙に関心を持ってもらう事です。
禁煙に全く関心がない人は、データによりバラツキがありますが喫煙者の 1〜3 割いると言 われています。
そうした人は喫煙の害に関する研修会や様々な教育資料を渡してもなかなか関心を持って くれません。
禁煙外来を勧めたり禁煙カウンセリングなどをやってもなかなか参加してくれません。
そうした人に禁煙に関心を持ってもらう一番良い方法は、気が付くといつの間にか自分も禁 煙プロジェクトを進める一員になっていたという状況に持ってゆくことです。
自分が禁煙プロジェクトを進める側になれば立場上禁煙に関心を持たざるを得なくなります。

この本で禁煙に無関心な人に関心を持ってもらう仕組みについて少しずつ解説してゆきた いと思いますのでぜひ最後までお付き合いください。

みんなが望んでいる
色々な調査を見ると実はほとんどの喫煙者がタバコをやめたいと思っています。 いくつかの調査を見てみましょう。

武田薬品工業調べ(2011 年 10 月)  アンケート回答者のうち「タバコをやめたい」「実際に禁煙中」との答えが 9割以上。 理由は「体調が気になるから」が多数で、続いて「家族の健康が気になるから」「おサイフ 事情」という結果になった。

国立がん研究センターの資料では、タバコを止めようと思わない人は男性喫煙者では 31%、 女性喫煙者では 22%となっています。

英米の研究では約70%の喫煙者が禁煙したいと思い、年間約 30〜45%が禁煙を試みてい ますが、禁煙成功率はわずか2〜3%に過ぎないと報告されています。

ファイザー株式会社調べ(2016 年 8 月、喫煙者 4,700 人対象) 禁煙については 8.5%が「何があっても禁煙しない」と回答。 年代別では 30 代が 5.4%、40 代が 9.2%、50 代が 11.1%と年代が上がるほど禁煙を検討し ない傾向。 この 1 年間で禁煙に挑戦したことがある人は 28.0%。男女別では、男性 24.1%、女性 32.0%。


このように多くの調査で 7 割から 9 割の喫煙者が禁煙したいと思い、喫煙者の 3 割から 4 割 の人が毎年禁煙に挑戦していますが禁煙に成功している人はわずかで、多くの人が挫折して いるという現状が見えます。
多くの人が禁煙を望むのにわずかしか成功しないのはなぜでしょうか。
それは多くの人が「頑張って禁煙する」からです。タバコを我慢して頑張る禁煙では、禁煙 外来を利用しても多くの人が挫折します。

ですが禁煙法には「楽しむ禁煙」という方法があります。
苦しまないでできる、タバコが吸いたくなくなる「楽しむ禁煙」という方法を会社がサポー トすれば多くの喫煙社員はすぐに禁煙出来るでしょう。
反対に中々禁煙出来ないのは喫煙者の中に 1 割以上存在する「何があっても禁煙しない」という岩盤層です。

この層に対してこの本では「イベントに巻き込む」方法で禁煙に関心を持ってもらうやり方、 巻き込むやり方をおすすめしていますが、実際に全社員禁煙を達成された企業さんを見ると、 喫煙社員の同僚がある程度以下になると相当なプレッシャーを感じるらしく、喫煙の岩盤層 が崩れはじめて、あるラインを越えたところで雪崩を打つように喫煙社員が減ってゆくそう です。
多くの喫煙社員は禁煙を望んでいます。喫煙社員の健康を、どうぞ回復させてあげてくださ い。

我慢せずに楽しむもの
「タバコを我慢する」という禁煙方法では多くの人が挫折します。
ですが「禁煙を楽しむ」という気持ちになってもって取組めば簡単に禁煙できます。
それにはまずは喫煙によって変わってしまった脳の仕組みを十分に理解してもらうことが 大事です。

タバコがうまいというのは完全な錯覚であることを理解すれば喫煙に対する考えががらり と変わります。
そうすれば喫煙なんてつまらないことはやめよう、タバコの悪夢から覚めて自分を取り戻そ うと思い、タバコから解放された後の自分が、その後の生活が楽しみになります。
そうした認識を得た上で、禁煙が怖くないことを理解してもらい、禁煙を始めてもらいます。

この本ではそうした喫煙社員へのサポートは同僚にやってもらうことを想定しています。
禁煙カウンセラーなどの外部人材の活用も良い施策ですが、費用が掛かりますし全社員禁煙運動を皆で楽しむイベントにするなら内部指導者を育てるほうが良いと思います。また、一般の禁煙カウンセラーが必ずしも「楽しむ禁煙手法」を理解しているわけではありませんのでその点もご注意ください。外部人材が「頑張る禁煙」でカウンセリングする人であった場合は喫煙者は禁煙との厳しい戦いを強いられ、必然的に禁煙の成功率は低下します。研修会や禁煙セミナーも同様です。それらに外部講師を委嘱する時は「楽しむ禁煙手法」で指導する人であることを確認してください。出来れば社員である禁煙メンターを講師として育てられることをお勧めします。もちろんプロジェクトメンバーには禁煙メンターになると共に禁煙セミナーの講師も出来るようになってほしいと思います。実際に株式会社ネクステージグループさんは社員を講師として、禁煙セミナーを継続的かつ頻繁に開催し、1 年間で全社員を禁煙・卒煙させましたので、御社でもぜひ挑戦してみてください。

一般の社員に禁煙をサポートしてもらう、「禁煙メンター」になってもらう場合、一般の社員が禁煙カウンセラーの資格を持っている事はないでしょうし、それを期待することもできません。そこで活躍してくれるのが次の 2 冊です。

「リセット禁煙」(磯村毅著 PHP 出版)  
「禁煙セラピー」他多数(アレン・カー著 KK ロングセラーズ)

「リセット禁煙」は文庫本で「禁煙セラピー」は新書判でいずれも千円以下で買えます。ちなみに「リセット禁煙」は「禁煙セラピー」に感銘を受けた、著者である磯村毅医師の長年の禁煙治療の実績をもとに書かれています。初版が 2014 年でタバコに関する資料などが新しいです。「禁煙セラピー」は著者がイギリス人で日本での発行が 1996 年で非常に長く読まれ続けている本です。禁煙プロジェクトのメンバーや禁煙をサポートをしてくれる禁煙メンター、そして禁煙を考え始めた社員などに、どちらの本でも構いませんので 1 冊を最初から最後まで読んでもらってください。そうすればタバコによる脳の機能低下を知ることが出来、タバコの良さがすべて錯覚だと分かり、禁煙が恐ろしくないことを知ることが出来ます。社員である禁煙メンターには、喫煙社員が疑問に思っている事の回答が本に書いてあることを伝えて喫煙者と一緒に本を読んでもらい、喫煙者の疑問解決や不安解消の手助けをしてもらえば良いのです。
そして一番大変な 3 日間、そしてその後の 3 週間を、脳内の甘い誘惑に惑わされないようにサポートすれば、簡単に禁煙出来るのです。

禁煙は気力で我慢して耐え抜こうとすると成功率が低くなります。
それは禁煙外来での禁煙 成功率の低さからもわかります。
しかも我慢して禁煙に成功した人は、その多くが再び喫煙してしまうと言われています。
禁煙外来では、喫煙によって変わってしまった脳の仕組みを患者に十分理解させるための時 間が圧倒的に不足しています。
タバコがうまいというのは完全な錯覚であることを理解させる時間も不足しています。
そして気持ちを切り替えれば、考え方を転換すれば禁煙は怖くないこと、それを解説し、理 解させ、気持ちを転換させる時間も資料もないのです。
初診時の 10 分程度の診察時間に、数ページのパンフレットと簡単な説明と薬を渡しただけ ではそうしたことは困難なのです。
しかも我慢して禁煙に成功した人は、その多くが再び喫煙してしまうと言われています。

もう一度言いますが、喫煙社員をタバコの仕組みを理解させないままに無理に禁煙させるべきではありません。
仮にあなたがテニスが好きだったとします。一方的に「テニスは二度とするな」言われたら どんな気持ちですか。
言った人を恨むでしょうし、テニスをやりたい気持ちはますます高まるでしょう。
ですがテニスに興味がなくなったらどうでしょう。止めたことを悔やんだりしないでしょう し、またテニスを始めようとも思わないでしょう。
あるいは愛しい人がいたとしましょう。もう会うなと言われれば会いたくて会いたくて、時 間がたつとともに恋しさはますます高まり、とても我慢できないものになるでしょう。
ところが愛しい人だと思っていた人が実はとても嫌な人で自分の悪口や貶めることを陰で やっていた。あるいは結婚詐欺の常習犯だったと知ってしまったらどうでしょう。愛しいと 思うでしょうか、会いたいと思うでしょうか。

タバコが脳の機能を低下させる事、タバコの良いところと思っていた物は全て錯覚だという事、危険な依存性薬物であ ることなどを理解させ、禁煙が怖くないことも理解させれば禁煙は我慢せずに楽しむことが 出来るのです。

喫煙の害を知らせたいの?
禁煙に関心がない喫煙社員にタバコの害やタバコによって嫌な思いをする人がいることな どを説いても耳をふさいで殻に閉じこもってしまいます。
そんな感じで喫煙の害を説く研修会などに参加させても同様に効果は期待できません。

タバコを吸わない方の中には喫煙者に怒りを感じる人もいらっしゃるでしょうが、怒りをぶ つけて禁煙してくれるなら良いのですがそんなことをすれば逆切れされるのが落ちです。
全 社員禁煙運動は喫煙の被害を伝えて追い込むのが目的ではありません。
社員に禁煙に踏み切 ってもらうことが目的です。

ですから一番大事なことはタバコの害や被害を説くことではなく、タバコにハマる仕組みや 喫煙で起こる脳内の活動、そして吸うことで感じる事の全てが実は錯覚であることをきちん と説明し、自らで喫煙の真実を理解してもらい、喫煙が生む錯覚を打ち払う決意を固めても らうように持って行くことです。

企業だからこそ可能
企業の規制があるうえでの禁煙と、それがない自由意思による禁煙では喫煙者の心理が全く 違います。
実際にティーペック株式会社さんはポピュレーションアプローチの考えのもと、禁煙させる事が難しいと言われる「頑張る・努力する禁煙的手法」で進めたにもかかわらず、3 年もかからずに全社員卒煙を成功させています。
この事例は企業がその方針として禁煙を強力にかつ継続的に進めてゆけば、社員には相当な プレッシャーとなる、禁煙に真剣に取り組むようになるという事をはっきりと示しています。
禁煙する社員が周りに増えてゆけば喫煙社員は焦りを感じるようになります。
会社が社員に 禁煙を強力に勧めている中で、課で最後の喫煙者という称号は誰しもが避けたいものです。
喫煙者の家族にも会社の方針を伝えれば力強い応援団になってくれるでしょう。

喫煙者はタバコの害を説くものなどは普通に視界に入ってきても実際には見ていません。
ですが課や係単位で声を出して読めば中身をきちんと見ざるを得ません。
タバコを吸うと脳の活動や感覚が非喫煙者よりも上昇すると思っていたことが実は間違い であること。
驚くべきは継続的な喫煙は脳を弱らせる、その状態になった人がタバコを吸うと一時的に脳 が少し回復し、その一時的な少しの回復を「タバコは美味しい」「タバコがあるから頭がさ えて良いアイデアも浮かぶ」などと錯覚していたことを知ることになります。
その事実は喫煙者本人にとっては相当ショックだと思います。

もちろんタバコが覚せい剤や麻薬と同列の、一部ではそれらを上回るほどの悪質な依存性薬 物だという事実も、喫煙者にとっては衝撃的なことだと思います。
このような事実をきちんと知らせられるのは、企業が強制して読ませることが出来るからで す。
喫煙者が会社からのプレッシャーを感じてくれ、タバコで向上すると思っていたのが実は逆 であったという衝撃的な事実を感じてもらえれば、あとはちょっとしたテクニックさえあれ ば全ての社員に禁煙してもらう、しかも楽しんで禁煙してもらうことは容易いことです。

業務改革よりもずっと簡単
全社員禁煙化を難しく考える必要はありません。
通常の業務改革などでやってきたことをそのままやればよいのです。
さらには業務改革などで起きがちな部門間の利害対立も支社と本社の対立も仕事のやり方 を変えさせられる社員たちの反対や意見対立も業務改革そのものへの異論もありません。
社員を健康にしたいというのが全社員禁煙化を進める大きな理由です。
社員を健康にしたいという方針に、社員を健康にするのは反対だというへそ曲がりはあまり いません。
全社員禁煙化運動はシングルイシューなので簡潔で分かりやすいというのも取り組みが簡 単な理由です。

全社員禁煙というと一部の喫煙者は身構えるでしょうが、決して無理やり禁煙させるわけで はないこと、タバコのことを理解し、タバコに対する見方を変えれば禁煙は簡単だという事を繰り返し説明すれば、理解は進んでゆくものです。
それでも全社員禁煙化なんて出来ないだろうと思っている経営陣の方や、全社員禁煙化に取 組むかどうか迷っている経営陣の方、全社員禁煙化に取組みたいがどうしたらよいか分から ないという経営陣の方も多いと思います。

全社員禁煙化をしようという発想を持った企業はまだ少ないですが、全社員禁煙化に取組み 成功した企業は特に珍しいことはやっていません。
全社員禁煙は多くの人が思うよりもずっと簡単に実現できます。
取組むと決定し、動き出してしまえばあとは達成時期が 1 年後か3年後か程度の問題にすぎ ないでしょう。
この後も本書を読み進めて頂き、施策を行う事への自信とアイデアをつかみ取ってください。

企業実例 株式会社ネクステージグループ 
ネクステージグループさんはリフォームを中核事業とする東京に本社がある社員数約 400 人の企業です。
ネクステージグループさんが社内禁煙活動を開始したのは 2015 年 11 月、その後「喫煙者ゼ ロ ブランドにする!!」を掲げると、2017 年 12 月には全社員卒煙を達成されました。
禁煙活動は“クリーンな施工”を目標に掲げた取り組みの 1 つであったそうです。
以下ネクステージグループさんが行った禁煙に関する活動です。
禁煙セミナー 
喫煙者を対象に定期的に『禁煙セミナー』を開催、セミナーの講師は社内の執行役員がされ たそうです。
『禁煙セミナー』 は、リラックスさせるために喫煙タイムからスタート。
「リセット禁煙」や「禁煙セラピー」のように、禁煙は楽しくできるという内容の説明にこ だわったそうです。
「家族が喜ぶ」「お金がたまる」などメリットを感じてもらうことで、「絶対に禁煙しない」 「禁煙できるか不安」と言っていた社員も自分の喫煙行動の理由を知り、禁煙に前向きにな っていったそうです。
1 人が禁煙を始めると周囲の喫煙者に影響し、禁煙に取り組む社員が増えていったそうで す。
卒煙手当 
卒煙を宣言した社員に禁煙外来補助金 2 万円を支給、卒煙できた社員には 2 万円の食事券を 進呈しました。
以上のように「楽しむ禁煙手法」を採用されたネクステージグループさんは禁煙セミナー開 始時点からでは、1 年ほどで全社員卒煙を達成されています。
「会社が禁煙者ゼロを宣言」して「楽しむ禁煙手法」に基づいた禁煙セミナーを数多く精力 的に開催してゆけば、そうしたシンプルな施策だけでも 1 年ほどで全社員卒煙を達成出来る ことを示す素晴らしい事例だと思います。
(社長さんの熱意と禁煙セミナー講師を買って出 た児玉執行役員さんの熱意による効果も大きかっただろうと感じました。)

企業実例 ティーペック株式会社
ティーペックさんは企業の検診等の事業を行う東京にある社員数約 200 人の会社です。
平成 25 年 3 月に喫煙0(ゼロ)運動を開始、当初は社員の 25%が喫煙していましたが、経 営トップの強い理念・方針のもとポピュレーションアプローチ的手法により平成 27 年 11 月に喫煙率・喫煙者0(ゼロ)を達成されま した。
以下ティーペックさんの喫煙0(ゼロ)運動の主な取り組みです。
社員健康宣言、社員健康促進制度制定を明文化
タバコの害に関する情報を随時提供
喫煙場所の撤去
禁煙外来の利用促進(自己負担額の一部を補助 但し禁煙外来で禁煙に成功した人は 2 人だ けでした)
非喫煙者に健康促進手当を支給(毎月 3 千円の健康手当)
禁煙成功者に健康促進祝い金(朝礼表彰 健康促進祝い金 1 万円)
喫煙者の減少動向を社内共有(朝礼等での発表)
以上のようにティーペックさんは「リセット禁煙」等が教えてくれる「楽しむ禁煙手法」を 用ず、より困難で時間もかかる「頑張る禁煙法」で進めたにもかかわらず 2 年 9 か月で全社 員禁煙を実現しています。
このティーペックさんの事例は「会社が禁煙を宣言」して取り組むことが社員の禁煙にはい かに効果的か、企業が真剣に取り組めば全社員禁煙がいかに容易く実現できるかを示してい ると思います。

企業実例 アクロクエストテクノロジー株式会社
アクロクエストテクノロジーさんはソフトウエア開発を主業務とする横浜にある社員数約 百人の会社です。
2000 年から全社禁煙をスタート、早速 2001 年入社組からは、タバコを吸う学生の採用を見 合わせました。
ヘビースモーカーだった社長も率先して禁煙しました。
全社員が相談し、喫煙離席後 7 分以内に席に戻らないと罰金を徴収することにしました。 (罰金は社員の懇親会費に充てる)
タバコを吸わない人が増えてくるとタバコを吸いに席を離れる社員は“居心地”の悪さを感 じるようになり、禁煙する社員が増えて行きました。
全社員禁煙が成功した理由を同社では以下のように分析しています。
社長自らがタバコを断ち、社員に強い意思を示した
健康面以上に経営上の観点から活動を推し進めた
全社員参加の場で禁煙の意思決定を行った
アクロクエストテクノロジーさんも達成が困難で時間もかかる「頑張る禁煙法」で進めたに もかかわらず全社員禁煙を実現しています。
ティーペックさんと同様に、企業が真剣に取り組めば全社員禁煙がいかに容易いかを示す事 例だと思います。

ちょっと一息 小話コーナー  エネルギーの黄昏
太陽は東から上がり西に沈む、この世の全ては、そうした大きな流れが終わるとき黄昏がや ってきます。
人類は草木というエネルギー=火を手にし、やがて文明を築きました。
草木は 1 年から数十年前程度というわずか数十年分程の太陽エネルギーの缶詰です。
人類はその缶詰をあっという間に食べ尽くし、至る所にハゲ山を作りました。

それでも飽き足らない人類は石油石炭という、草木よりもずっとずっと古いエネルギーを掘 り出しました。
石油石炭は数万年から数億年前という数億年分の太陽エネルギーの缶詰です。
人類は数億年分の太陽エネルギーの缶詰をわずか数百年で堀りつくす勢いで食べています。

それですら飽き足らない人類は、石油石炭よりもずっとずっと古いエネルギー、核分裂とい うエネルギーまで掘り出しました。
核分裂エネルギーは 46 億年から 130 数億年前の、他の太陽の破滅により生まれたエネルギ ーの缶詰です。
今までは古いとは言っても自らの太陽が作ってくれたエネルギーでしたが、核分裂エネルギ ーはそうではありません。
今では爆発して消えてしまった他の太陽のエネルギーという、今までとは次元が違うエネル ギーです。

そして1周回って、人類は今降り注いでいる太陽エネルギーだけで生きて行ける力を手にしました。
あちこちに降り注いでいる今現在の太陽の光や熱や風や波や雨水のエネルギーを集めれば 生きて行ける力を。

それなのに人類は核分裂に加えて核融合という宇宙創世の時に生まれたエネルギー、これ以 上は時を遡ることが出来ない、最後の最終のエネルギーを手に入れようとしています。
時間をさかのぼって新たなエネルギーを掘り出すという大きな流れの終着点に至ろうとし ています。
その人類の姿は、黄昏の中に沈んで行く者のように見えるのです。


1章−3 合法的な麻薬

タバコは未認定の麻薬 いわば合法麻薬
ニコチンの「麻薬性」を他の薬物と比較するとどうなるでしょうか。 まずはアメリカ国立薬物乱用研究所(NIDA)の依存性評価 (1994 年) で見てみましょう。 調査した依存薬物はニコチン・ヘロイン・コカイン・アルコール・カフェイン・大麻です。
調査項目は依存性・禁断性・耐性・切望感・陶酔性で、順位の最悪は 6 で最小は 1 です。

依存薬物 依存性 禁断性 耐性 切望感 陶酔性
ニコチン  6  4  5  3  2
ヘロイン  5  5  6  5  5
コカイン  4  3  3  6  4
アルコール  3  6  4  4  6
カフェイン  2  2  2  1  1
 大麻  1  1  1  2  3

驚くべきことに依存性ではニコチンがヘロイン・コカインという第 1 級の麻薬を抑えて最悪 の第 1 位。
そして大麻の数値の低さにも驚かされます。
こんなに低い数値の大麻を非合法に出来るのならニコチンはなぜ非合法にしないのでしょ うか。
コカインと比べてもニコチンの方が悪質性が高いように思えます。

ニコチンをなぜ麻薬に認定しないのか全く理解できません。
ちなみに禁断症状はアルコールが一番重く第 1 級の麻薬であるヘロインを上回っています。
アルコール依存症の離脱症状を抜く時は暴れるので、ベッドに縛り付ける必要があると言わ れています。アルコール依存症も実は相当怖いものだという事が分かります。

吸った人の三分の一が依存症に
先ほどはニコチンの「麻薬性」全般を見ましたが、今度は使用した人に対する依存症になっ た人の割合です。(全米科学アカデミー医学研究所・1999 年)
タバコ 32%   ヘロイン 23%   コカイン 17%   アルコール 15%   大麻 9% 抗不安剤(鎮痛剤や睡眠剤を含む) 9%

依存症になった人の割合は第 1 級の麻薬であるヘロイン・コカインを抑えてタバコはダント ツの第 1 位です。
特に未成年からの喫煙は、より悪性の依存症に落ち込み、這い上がれなくなります。
色々なデータでは、ヤンキーなど勉強嫌い・社会適応力が低い仲間に囲まれた人は喫煙率も 高くなり、収入も低くなる傾向があり、さらにタバコは違法ドラッグや覚せい剤などに染ま る「入り口の薬物」という側面も持っていると言われています。

タバコは青酸カリの 2 倍の猛毒
ニコチンは毒物及び劇物取締法に指定された「毒物」であり、医薬品医療機器等法で指定さ れた「毒薬」です。
驚くことにニコチンの毒は青酸カリの 2 倍の強さを持っています。
ニコチンの致死量は、子供では経口摂取でタバコ1〜2本分です。
このため、飲み残しのジュース缶などに吸いかけのタバコを捨た場合、それを知らずに子供 が缶の残りを飲んだ場合、子供はもがき苦しむ事になります。
喫煙者は 1 日何本も吸っているのでそんなに怖いものだとは思わないでしょうが、ニコチン は法律で指定されている立派な「毒物・毒薬」です。
煙として肺から吸収される時の致死量には余裕がありますが、胃から吸収されると非常に危 険です。
飲酒中に喫煙をすると、口の中のニコチンがアルコールに溶けて胃に入るので、場合によっ ては重篤な中毒を引き起こします。飲酒中の喫煙は特に控えるべき行為です。

ニコチンは毒物、PM2.5、発がん性物質のデパート
ニコチンが持つ麻薬並みの依存性、青酸カリ以上の毒性を見てみました。
タバコは昔から多くの人が吸っていた実績がある、税収がある等の理由で違法・禁止薬物と なっていないだけで科学的には違法・禁止薬物と同等の悪質性を持つ依存性薬物です。
もちろんその煙には 70 種類の発がん性物質をはじめとした 5300 種類もの化学物質が含ま れ、虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、胎児発 育遅延や乳幼児突然死症候群(SIDS)などの妊婦への影響、小児の喘息既往、未成年者には 全死因死亡など、膨大な数の疾患の原因となります。
社員がこのような危険な毒物・薬物を日常的に摂取しているのを放置する、嗜好品として私 生活は本人の自由に任せるというのは非常に大きな問題ではないでしょうか。

死者数は交通事故の 4 倍
厚生労働省禁煙支援マニュアル掲載のリスク要因別の関連死亡者数(2007 年)から喫煙に よる死亡者数を見てみましょう。
死亡者数で一番多いのが喫煙に関するもので 12.9 万人、次いで高血圧の 10.4 万人、3 位が 運動不足で 5.2 万人となっています。
喫煙による死亡者数は高血糖と塩分高摂取と高 LDL コレステロールと過体重・肥満と果物・ 野菜の低摂取の 5 つの死亡者数を足したよりも多くなっています。
なお参考までに交通事故による死者数は年間で 3,532 人です。(平成 30 年)

喫煙関連死亡者数 12.9 万人のうち受動喫煙による年間死亡者数は 1.5 万人とされ、交通事 故による死者数のなんと4 倍以上の人が犠牲になっており、望まぬ喫煙により多くの人が 「殺されている」ことを示しています。
受動喫煙による年間死亡者が 1.5 万人という事は、人生 80 年とすると、1 億 2 千万人のう ち 120 万人、人口の 1 パーセントが望まぬ喫煙により「殺される」という事です。
自動車を所有している人はみな多額の自動車保険に入っていますが、自動車保有者が心配し 恐れている交通事故死亡者の 4 倍以上の死亡者を、喫煙者は自らの喫煙により生じさせてい るのです。この事実は大事なことです。

しかも自動車は生産活動や人の移動に必要なものですが、タバコにはそんな利点は何一つありません。
人を深刻な依存症に陥らせ、そして害毒をまき散らすだけの危険な薬物です。
喫煙者は善意の第三者ではないのです。

リスク要因別の関連死亡者数内訳(単位:万人 2007 年) 厚生労働省禁煙支援マニュアルより

循環器疾患 悪性新生物 糖尿病 呼吸器
系疾患
その他の非
感染性疾病
外因
喫煙   3.34    7.74
 1.81

高血圧   10.39




運動不足   4.22   0.93  0.07


高血糖   2.72
 0.69


塩分の高摂取   1.90    1.49



アルコール摂取
   1.82

    1.16 0.29
ヘリコバクター
・ピロリ 菌感染

   3.06



高 LDL コレステロール   2.39




C 型肝炎ウイルス感染
  2.30



多価不飽和脂肪酸の低摂取   2.12




過体重・肥満   1.38   0.41  0.11


B 型肝炎ウイルス感染
  1.16



果物・野菜の低摂取   0.51   0.38





1 章−4 喫煙社員の苦悩

喫煙場所はどこ?
喫煙社員の外回りの重点ポイントは喫煙場所、取引先に着く前にどこでタバコが吸えるか、 あの駅はあそこに喫煙スペースがあるからそこで吸ってから回ろう。 次の商談があるのにそんな事が気になってしまう悲しさ。
喫煙社員は終業時間が待ち遠しい、あと 1 時間我慢すればあそこでタバコが吸える。そんなことを考えている悲しさ。

タバコが美味しいという人ほど本当は禁煙の必要を感じているのではないでしょうか。
本当はやめたいけれど止めるのが怖い、仕事を終えた後の達成感、食後や酒席の満足感、色々 な喜びを失うんじゃないか、何か良くないことが起こるんじゃないか、禁断症状がとっても 怖い、我慢できそうもない等々、だから止めたくても絶対にやめられないと思っている。  
タバコ臭いと嫌がられているのが分かっていても、周りの人の視線が気になっても、風邪で も咳が出ても熱があっても医者に吸うなと言われても、近くに子供がいても、煙を吸い込む なんて体に悪いと分かっていても、こそこそ隠れるようにして吸うのは惨めだとは分かって いるけれども吸わないと我慢できない。
このような喫煙者は実に哀れです。その姿はまさに「ニコチン奴隷」と言えるものです。

ストレスの無限ループ
タバコを吸わないと頭がスッキリしない、なんとなく間が持たない、物足りない、イライラ する、食後の満足感がないような気がする、多くの喫煙者がそうした沢山のストレスを抱え ています。
そのため喫煙者はそうしたストレスを消したいと思ってタバコに手を出してしまいます。
ですが、タバコによって本当に解消できるストレスは「ニコチン切れによるストレス」だけ で、それ以外はニコチンが切れたことで生まれるニコチン依存の禁断症状が作り出している ものです。
喫煙がストレスを作り出し、それを解消すべく喫煙し、さらにそれがストレスを生むという 負の無限ループを、タバコは作ってしまうのです。
また喫煙者は、非喫煙者と比べると不安を感じる人が多いので、「禁煙」というワードを聞 いただけでも不安になり、禁煙しようと思うとタバコが欲しくなるという冗談のような事さ えあるのです。

タバコと幸せはワンセット
またタバコを吸わないと幸せを感じにくいということも、この薬物を止めにくくさせていま す。
タバコの継続的な摂取により脳は何度も過剰興奮にさらされ、その防衛のためドーパミン受 容体を減らさざるを得なくなります。
この事により喫煙者の脳は機能低下状態になってしまうのですが、これは間が持たない、物 足りないという離脱症状の他に、ニコチンがないと「幸せや満足感が完結しない」「楽しさ が完結しない」という離脱症状ももたらします。

このため食事後の満足感を得るためにはニコチンが必須になり、楽しいことをやっていると きはニコチンが欲しくなり、酒を飲んでいてもタバコがないと楽しくないし、趣味に打ち込 んでいるときもタバコが欲しいし、これから重要な仕事に取り掛かろうとする時や重要な仕 事が終わった時もタバコを吸わないと取り掛かれなかったり喜びがわいてこなかったりし ます。
極めつけは覚せい剤を決めたときもタバコを吸わないとその快楽を十分に味わえなくなる のです。 覚せい剤でさえニコチンがセットでないと利きが悪いとは驚くべき話です。
さらには、タバコがないと楽しくない、幸せが感じられないと錯覚しながら生活を送ってい る喫煙者は、「うつ」になる可能性が非喫煙者の 2 倍以上になるというデーターも出ていま す。

ちょっと一息 小話コーナー 男はきれい、女は地味
男なら美人を見れば美しいとか可愛いと思うのが普通ですよね。
男と女はどっちがきれいかなどとアンケートでも取れば女のほうがきれいという結果が出 てきそうです。
ですが、それって本当でしょうか。
ここでお聞きします。クジャクのオスとメスできれいなのはどっちですか。答えはもちろん オスです。
オシドリのオスとメスできれいなのはどっちですか。答えはもちろんオスです。
鳥ばかりではいけませんね、ではライオンのオスとメスでカッコイイのはどっちですか。答 えはもちろんオスです。
鹿のオスとメスで角が大きくてカッコイイのはどっちですか。答えはもちろんオスです。
さてお聞きします。動物でメスのほうがきれいだという種を、知ってます?
私は知らないのですが、もしかするとどこかにいるかもしれませんね。
ではなぜ動物のオスとメスでは、オスのほうがきれいだったりカッコ良かったりすることが 多いのでしょう。

答えは簡単。求愛する方は、きれいにしたりカッコよくしたり歌がうまかったりダンスがう まかったりきれいに光ったりしないと相手を落とせないからです。
つまり、求愛する側は派手で、それを選ぶ側は地味でいい、なんせ地味な方が着飾るための エネルギーはいらないし捕食者にも見つかりにくいですからね。
クジャクのオスなんか羽根に無駄にエネルギー使ってるし天敵に見つかりやすいし、逃げに くそうだしリスク大きそうですよね。
最近化粧する男がいる、ピアスだのじゃらじゃらつけて何なのとかお嘆きのあなた。
男が化粧するのは当たり前です。口説かなくちゃならないのです。動物の基本に忠実とい うだけの事です。
飾り羽根にタテガミ、やたら大きな角にやたら大きな牙、蛍はチカチカ蝉はミーンミーンカ エルはゲコゲコ、自分の遺伝子を残したいオスはどこの世界でも必死なんですね。


2 章ー1  社員の喫煙状況や考えを知ろう

どんなアンケートにする?
いよいよ全社員禁煙運動のスタートラインにたどり着きました。
どんな運動も改革も初めは社内の現状と社員の気持ちを知るところから始めます。
全社員禁煙運動の場合も社員の喫煙状況やタバコに対する考えをしっかりと把握した上で 対策を立て、プロジェクトを推進してゆくことになります。
そこでこの章ではアンケート調査などの具体的な内容などを考えて行きます。
アンケート対象は第 1 には社員及び喫煙者の家族ですが、各部門長・取引先・顧客・近隣住 民・近隣企業社員などの考えも聞き、プロジェクトの立案に取り入れることも検討してみて ください。
アンケート集計・分析の結果は社員等に必ず公表してください。
現在の喫煙状況を踏まえれば、アンケート結果は喫煙者にプレッシャーを与えることでしょ う。
それはこれからの禁煙運動の推進に大きく役立つと思います。
アンケートには会社として全社員禁煙運動を始めることを印象付ける効果や、社員に真剣に 考えてもらうという効果もあります。

社員へのアンケートは以下のような内容が考えられます。
喫煙・非喫煙等の状況把握
禁煙意思・禁煙に対する関心態度のステータス等の把握
喫煙に対する考えや不安・悩み、会社からの支援として期待する事等の把握
業務以外の飲み会等での受動喫煙及びそれに対する考えの把握
喫煙の害・影響をどの程度把握しているか及びそれに対する考えの把握
ランチミーティングや禁煙メンター、愛称の募集などのイベントに対する考えの把握
会社が喫煙室撤去や就業時間中禁煙・禁煙運動を行うことに対する考え及びそれへの参加意欲の把握
禁煙健康手当創設に対する考えの聞取りなどです。

家族へのアンケートでは、社員の喫煙をどう感じているか社員の禁煙をサポートする考えが あるか等を把握します。
家族アンケートの実施は、会社が家族も巻き込む考えをもっている事、家族によるサポート も得ようとしていることを喫煙社員に示すことになりますので、喫煙社員の禁煙への気持ち を高める効果もあると思います。
アンケート項目の例を挙げると以下のようなものでしょうか。
社員やパートナーの喫煙状況とそれに対する考えを聞く  
子供がいる場合は親の喫煙に対する考えを聞く
会社が社員に禁煙を勧めた場合、パートナーや親の禁煙を応援してくれるかを聞く
ベランダ喫煙・庭先喫煙等近隣への迷惑行為の状況などを聞く

社員個人へのアンケートとは別に部長・課長・係長等へのアンケート、聞き取り調査も行い ましょう。
部署での喫煙に関するとらえ方、問題意識がどのレベルかを聞く。
禁煙ニュースを週次打合せで読み合わせる時間をとってもらったり、喫煙室撤去や就業時間 中禁煙への理解・非喫煙社員化推進などを業務に取り込んでもらう等の各部門の様々な協力 取り付けや各部門の喫煙状況等の把握を行いましょう。

取引先・顧客へのアンケートでは、当社の喫煙状況に対し感じたものを把握すること、来客・ 顧客として当社で喫煙できる環境があったほうが良いと思うかどうか等の把握を行います。
アンケート項目の例を挙げると以下のようなものでしょうか。
一般的に客先企業や訪れた店舗で当該企業社員の喫煙やその煙りを目撃あるいは感じた場合どう思うかを聞く
当社内・店舗で当社社員の喫煙やその煙りを目撃したか・感じたか、感じた場合どう思った かを聞く
当社社員との飲食等の機会に当社社員の喫煙はあったか、その場合どう思ったかを聞く
当社社員が当社近隣で喫煙していたらどう感じるかを聞く 当社に来客用の喫煙室があった方が良いかを聞く  
当社は喫煙室撤去や就業時間中禁煙・禁煙運動を行う事を予定しているがそうなった場合ど う思うかを聞く

近隣住民・近隣企業社員へのアンケートでは、当社近隣での当社社員の喫煙を目撃したか、 その場合にどう感じたか等を把握します。
オフィスビルに入居している場合は他フロアの企業へに聞取り等はやっておいた方が良い のではないでしょうか。
アンケート項目の例を挙げると以下のようなものでしょうか。
当社や当社社員から喫煙やその煙りを感じたか、感じた場合どう思ったかを聞く
当社社員の当社近隣での喫煙あるいは吸い殻のポイ捨て等を目撃したことがあるか、目撃し た場合はどう感じたかを聞く

アンケートの時期ですが、第 1 回のアンケートは全社員禁煙運動を始める前に行いますが、 その後も状況の進展や意識の変化を把握するために定期的に行う必要があります。
特に社員向けアンケートは質問項目が多岐にわたりますので、少量ずつ頻繁に行う必要があ ります。

必要な項目を考えよう
第 1 回目の社員向けアンケート内容は次のようなものが考えられます。

社会は禁煙に向かっています。会社としても喫煙者をゼロにする取り組みを行おうと思って います。あなたの考えを教えてください。
氏名 年齢 所属等
喫煙しているか いつから 何年 1日何本 すでに禁煙した(その時期) 喫煙したこと はない
あなたの禁煙ステータスはどれですか
禁煙を考えていない(今まで一度も考た事はない 以前あったが今はない) 禁煙したい気 持ちはある(その理由) 禁煙にトライしたいと思っている(その理由)  現在禁煙にト ライしているところ(何日前からか) 過去に禁煙にトライしたことがある(いつ頃 どの くらい トライした回数) すでに禁煙した(いつ頃か) 吸ったことがない
過去に禁煙にトライしたことがある人、トライしようと思ったことがある人 いつごろか どんなとき・どんな状況か なぜ試したか、その動機は その結果は どのくらい続いたか 大変だったか・それは何日くらいだったか
職場でタバコの臭いを感じたことがあるか どのくらい どこで どう思ったか 喫煙者 禁煙中の人 非喫煙者
喫煙休憩をどう思うか  喫煙者 禁煙中の人 非喫煙者
喫煙室や灰皿撤去について 喫煙者 禁煙中の人 非喫煙者
就業時間中禁煙について 喫煙者 禁煙中の人 非喫煙者
昼休みの禁煙について 喫煙者 禁煙中の人 非喫煙者
全社員に非喫煙者化の取り組みについて  本人の同意での禁煙なら良い 私生活まで干 渉すべきではない 強制的にでも禁煙してもらった方が良い 喫煙者 禁煙中の人 非喫煙者
非喫煙者への健康手当支給について 喫煙者 禁煙中の人 非喫煙者

こんなことも聞いてみよう
最近のタバコの規制についてどう思うか  
喫煙社員をゼロにする取り組みをでよい案があったら教えて
何をやったらよいか どのように進めたらよいか 本人の同意で社員に禁煙させることについて やるべき どちらでも やるべきではない  
オフィスに喫煙所があることあるいは外階段などに灰皿が置いてある事をどう思うか 迷 惑 かまわない あったほうが良い  
同僚との飲み会で受動喫煙について 今まであったか あった場合はどう思ったか
喫煙者は脳機能が低下していて生産性も下がっていることを 知っている 知らない
喫煙の害について 知っている(どんな害か) 知らない 害があるとは思わない  
禁煙治療は保険で行える。それは喫煙はニコチン依存症という病気と認定されているから、 喫煙は病気だという事を  知っている 知らない
ニコチンが青酸カリの 2 倍の毒物であること 知っている 知らない
ニコチンが覚せい剤などと同じ強力な依存性薬物であること 知っている 知らない
タバコの煙が Pm2.5 であること 知っている 知らない
路上喫煙が他人へ害や不快感を与えていること 知っている 知らない
ベランダ喫煙や自宅庭先・台所の換気扇を回しての喫煙等が近隣住民へ害や不快感を与えて いること 知っている 知らない  

非喫煙者・すでに禁煙した人等に問する質問
同僚の禁煙をサポート・お手伝いしてもらえるか

以下は喫煙者向け 1年間のタバコ代はいくら位か その額でほかのものが買えたらなにに使いたいか
禁煙する気になるには何が必要だと思うか どんなサポートが欲しいか
禁煙を成功させるには何があるといいか
就業時間中禁煙になったら禁煙するか  それでも禁煙しない人には、さらに昼休みも外出中も禁煙の時は禁煙するか
会社が全社員の禁煙に取り組むと言ったらどう思うか 迷惑か どんなことが嫌か どん なことをされるといやか これを機会に禁煙するか
私生活も含めて完全禁煙と言われたらどう思うか 迷惑か これを機会に禁煙するか
喫煙を続けることに不安はあるか どんなところが不安か
喫煙している社員が次々に禁煙していったらどう思うか 迷惑か 禁煙するか
どういうときに吸ってしまうか  どういうときに吸いたくなるか
あなたが気になるタバコの害・デメリットは何か
あなたが思う喫煙のメリットは何か
あなたが喫煙をやめないのはどんな理由からか
職場の元喫煙者が禁煙の経験を教えてくれたり、悩みの相談に乗ってくれるとしたらどう思 うか
職場のタバコを吸わない同僚が喫煙の錯覚について教えてくれたり、禁煙のサポートをして くれるとしたらどう思うか
家族は喫煙しているか(それはだれか)
喫煙について家族はどう言っているか パートナーは 子供は
他の社員から「タバコは嫌だな」というような空気は感じるか
喫煙に不安があるか ある(何が不安か) 実際に健康を害している(その内容) ない

質問をして考えてもらおう
禁煙を成功させるためには、タバコで脳がどうなってしまうのか、タバコを止めるべき理由 は、禁煙を始めるに時に必要なことは、などを喫煙者本人に考えさせて自らで答えを出して もらうという事が重要です。
人から言われただけの内容ではなく、自分が考え出した結論をしっかりと持っていると、禁 煙を始めて、吸いたい気持ちが起こった時に、それに打ち勝つ力を与えてくれます。 喫煙者本人に考えてもらいたい質問をいくつか挙げてみましたので、参考にしてください。

非喫煙者の脳のα波は 10.0Hz と喫煙常習者の脳のα波 9.3Hz に比べて高く、そのことは非 喫煙者の脳は正常に働いていることを示しているそれはなぜか どう思うか
喫煙常習者の脳のα波が 9.3Hz まで低下し、脳が活動低下状態である(うつ状態と同じ状態 になっている)がそれはなぜか どう思うか
喫煙者が喫煙すると低下していた脳のα波が 9.3Hz から 9.8Hz と非喫煙者に近い水準まで 上がり脳が少し正常化し、それが頭がすっきりする、良いアイデアが浮かぶ、リラックスで きる、手持無沙汰が消える、不安が吹き飛ぶ、食事がおいしい、お酒がおいしい、意欲がわ くという感覚をもたらしてくれる。それはなぜか どう思うか
喫煙常習者は食事の後に(仕事を達成した後に)タバコを吸わないと美味しさや満足感を得 られないと言われるがそれはなぜか どう思うか
非喫煙者はタバコを吸わなくても食事の美味しさや満足感を(仕事を達成しただけで満足感 を)得られると言われるがそれはなぜか どう思うか
喫煙常習者はタバコを吸わないと良いアイデアが出てこない(楽しい時でもあまり楽しめな い、酒を飲んでもあまり楽しめない、仕事や趣味に興味がわきにくい、ミスや事故・怪我が 多くなる)と言われるがそれはなぜか どう思うか
非喫煙者はタバコを吸わなくても良いアイデアが出てくる(楽しい時は素直に楽しめる、酒 を飲めば楽しめる、仕事や趣味に興味がわきやすい、ミスや事故・怪我が少ない、脳のスト レスが少ない、手持無沙汰という感覚がない、)と言われるがそれはなぜか どう思うか
禁煙すると食事がマズくなると思うか 頭がすっきりしなくなると思うか 良いアイデア が浮かばなくなると思うか いつもなんとなく間が持たない、物足りない感じになると思う か 酒の席がつまらなくなると思うか 仕事が一段落した時も達成感がなくなると思うか 「さあこれから大仕事に取り掛かるぞ」と思った時に踏ん切りがつかなくなると思うか
タバコを吸わなくても頭がすっきりしているとしたら(リラックスできているとしたら、食 事がおいしいとしたら、お酒がおいしいとしたら)それでもタバコを吸うか。それはなぜか
口寂しくてタバコを吸うそれはなぜか どう思うか
口寂しいという感じを持たない非喫煙者をどう思うか
タバコの継続的な摂取により脳が何度も過剰興奮にさらされると脳はどうなると思うか
喫煙者で覚せい剤常習者である人が覚せい剤を打った時にタバコも吸わないと覚せい剤の 利きが悪いそうだが、何故だと思うか
喫煙者は「うつ」になる可能性が非喫煙者の 2 倍以上になるというデーターを聞いてどう思 うか なぜだと思うか
喫煙常習者が感じるストレスのほとんどは実はニコチン切れのストレスが引き起こしてい ると言われるがそれを聞いてどう思うか なぜだと思うか
タバコによって解消できるストレスは「ニコチン切れによるストレスだけ」で、そのほかの ストレスはニコチンが切れたことで生まれる「ニコチン依存の禁断症状」が生み出している 幻だと聞いてどう思うか なぜだと思うか
なんとなく間が持たない、物足りない、何かが抜けてむなしいような感じ、口寂しい、何と なく不安、イライラする。それらはすべてニコチン依存症の禁断症状=離脱症状だと聞いた らどう思うか なぜだと思うか
喫煙常習者の脳は活動低下状態になり、それを脳はストレスと感じていると聞いてどう思う か なぜだと思うか
タバコを吸うと脳の活動や感覚が非喫煙者よりも上昇すると思うか なぜだと思うか
タバコを吸って脳の活動や感覚が回復してもまだ非喫煙者よりも下回っていると聞いてど う思うか なぜだと思うか
非喫煙者はタバコを吸わないので脳のストレスが少ないと言われるがそれを聞いてどう思 うか なぜだと思うか
タバコの良さと感じているものが全て錯覚だとしても(ニコチンにより脳が機能低下したこ とがストレスの原因だと分かったとしても)タバコは良いぞと言って他人にタバコを勧める か それはなぜか
覚せい剤や麻薬とタバコとの「麻薬性」の比較ではタバコが一番依存性が高く悪質だが、そ れを聞いてどう思うか
禁煙は怖くない、苦しくない、失うものはないもないと聞いたらどう思うか
あなたは何のためにタバコを吸うか
なぜタバコがおいしいと感じるか
タバコう吸うのはなぜ楽しいか
大金をはたいて吸う価値がタバコにあると思うか
あなたは吸い始める前に帰ったら、今のように吸い始めるか
タバコはあなたにとってどんな役に立っているか
あなたはお子さんが 20 歳になったら、タバコを勧めるか それはなぜか
お子さんや若い人が受験勉強で悩んでいたら、頭がさえるぞ、ストレスが解消するぞとタバ コを勧めるか それはなぜか
お子さんや若い人が悩んでいたら、ストレスが解消するぞとタバコを勧めるか それはなぜ か
タバコを吸う人は好ましいか それはなぜか
食後の一服(会社が終わった後の一服、電車を降りた後の一服)という楽しみを知らない人 はかわいそうと思うか それはなぜか
街の喫煙スペースで喫煙している人を見てどう思うか それはなぜか
タバコを吸わない人を見て本当のリラックスを味わえていない人と(ストレスがあった時に タバコを吸えなくてかわいそう、人生に行き詰まった時にタバコを吸えなくてかわいそう、 人生を楽しめなくてかわいそう、ひ弱で付き合いの悪い人と)思うか それはなぜか
タバコの一服のおいしさを知らない人をどう思うか、おいしさを教えてあげたいか それは なぜか  
吸える場所や吸える時間をいつも気にしている自分をどう思うか
朝起きたらタバコを吸いたいという気がまったくなくなっていた 食後に喫煙しなくても とっても満足する しごとが片付いた後に喫煙しなくてもとっても満足するようになった らどう思うか  うれしいか 残念か なぜか
生まれて初めて吸った 1 本は美味しかったか 今は美味しいと感じるならその違いは何だ と思うか
タバコはニコチン切れの時に吸うと美味しく感じ、タバコを吸って数分後などニコチンの血 中濃度が高い時に吸ってもうまく感じないが、なぜそうなると思うか
タバコはニコチン切れの時に吸うと脳の機能不全が解消されすっきりするために美味しく 感じ、タバコを吸ってすぐに吸うと、脳の機能不全がすでに解消されているのでうまく感じ ないのだがそれを聞いてどう思うか
タバコを吸い始めてしばらくして「うまい」と感じられた瞬間こそニコチン依存症患者誕生 の瞬間と言われるがそれはなぜだと思うか
ニコチンは自らの効果で脳を機能不全にさせておきながら、一時的に機能不全を回復させて、 その回復だけをもって報酬と誤認させ実は何も報酬を与えない、まさしくマッチポンプとい う、極めて悪辣な依存性薬物だがそれを聞いてどう思うか
ニコチン摂取は他の麻薬に比べても、そして静脈注射による投与に比べてさえも格段に早く 作用する。そうした「報酬提示の即時性」がある薬物はその摂取行動は非常に強化されると 言う。それを聞いてどう思うか
同じ依存性物質でもアルコールなどはそれ自体が快感覚をもたらす作用があるので飲めば 必ず報酬として認識されるが、ニコチンはダルイなどの離脱症状があるときのみ報酬として 認識され、ニコチンの血中濃度が一定以上あるときに摂取しても報酬と認識されない。この ような作用を「間欠強化」と呼ぶが、「間欠強化」を持つ薬物・ニコチンに依存した場合は いつまで経っても喫煙衝動が消えないという。それを聞いてどう思うか
社員のニコチン依存症治療に真剣に取り組まないで、喫煙休憩を自由に与えてその疾病を温 存する、そうした企業は労働安全衛生法の精神に合致していると思うか それはなぜか
タバコが脳を機能低下させるということ、タバコによりストレスが解消するというのが錯覚だと理解してから禁煙すると、苦しまずに禁煙できるというがそれはなぜか どう思うか
禁煙の離脱症状が「朝起きたときに吸いたくなるのを我慢する」のと同程度しかないと聞い てどう思うか
年間死亡者数で一番多いのが喫煙に関するもので 12.9 万人、次いで高血圧の 10.4 万人、3 位が運動不足で 5.2 万人、コレステロール 2.4 万人、B 型肝炎 1.2 万人、ちなみに交通事故 による死者数はタバコより 2 ケタ少ない年間で0.35 万人です。それを聞いてどう思うか
外回りや外出中に喫煙場所を探さなくて良くなったらどう思うか
「禁煙」とか「禁煙してください」という言葉を聞くとどう感じるか それはどうしてだと 思うか
ニコチンは青酸カリの 2 倍の毒物であるが、それを聞いてどう思うか
当社は喫煙者であれば規定以外の時間に自由に休憩してかまいません。休憩中は上司や同僚 との打ち解けた時間も共有できるかもしれません。ですが喫煙しない人にはそんな自由な休 憩時間はありません。この二つには給与や昇進に何の違いもありません。自由にお選びくだ さい。あなたが新入社員と仮定してそんなことを言われたらどう思うか それによって喫煙 する人は増えると思うか減ると思うか
社員を禁煙させて健康を取り戻してあげたいという会社の考えをどう思うか
喫煙休憩は社員の権利だと思うか 喫煙者にそれに代わる休憩がないのはどう思うか
喫煙休憩は喫煙者同士でコミュニケーションが取れて有意義な場だと思うか その有意義 なコミュニケーションの場に非喫煙者が排除されていることをどう思うか
副流煙被害により交通事故死者の 4 倍以上にあたる毎年 1.5 万人が死亡しているとの厚生 労働省の調査結果があるがそのことをどう思うか
タバコにより年間 2 兆円を超える経済損失が発生しているがどう思うか (厚生労働省の資料ではタバコによる経済損失は年間 4.3 兆円、対してタバコの税収は 2.1 兆円、差し引きの損失は年間 2 兆円以上)
ベランダ喫煙被害訴訟で喫煙住民に罰金命令が出た例があるがどう思うか
ベランダや庭先、レンジフード下での換気しながらの喫煙は近隣住民に迷惑をかけていると 思うか
放火を除くと火災原因の 1 位はタバコで,それにより多くの人が焼け出される等の迷惑を受 けているがその事をどう思うか
タバコの煙は PM2.5 です。PM2.5 による健康被害についてどう思うか
タバコによる健康被害などをどう思うか
タバコもセクハラと同じで、本人は悪くないと思っていたとしても相手が嫌と思うかどうかが重要だという声があるがどう思うか
喫煙者の喫煙休暇は 1 日 40〜60 分、年間では平均で 150〜200 時間ほどにもなり、20〜25 日間の年休に相当するがどう思うか
喫煙休暇が 20〜25 日間の年休に相当する場合、喫煙社員 8 人と非喫煙社員 7 人の実労働時 間が同程度になるがどう思うか
喫煙休憩を取らない非喫煙社員だけに非喫煙健康手当が支給されるとしたらどう思うか
通勤途中・昼休み等の会社近隣での喫煙・タバコのポイ捨て、さらにはベランダ喫煙等での 会社のイメージ・社員のイメージの低下があると思うか
全社員禁煙・喫煙者不採用を打ち出した企業で前年よりも優秀な学生が多く集まって事例が あるが何故だと思うか どう思うか
喫煙室があるとその分の賃料・減価償却・清掃等の維持管理費が発生するが、その事をどう 思うか 非喫煙者にかかる経費との格差は合理的と思うか
会社が健康のため私生活でも禁煙してくれと言ったらどう思うか
健康のため私生活でも 食事内容や運動に気をつけてくれと言ったらどう思うか 社員が私的な時間に覚せい剤を吸ったらどう思うか
覚せい剤と同等の依存性薬物である タバコを私的な時間に吸うのはどう思うか
会社が喫煙者不採用を宣言したらどう思うか
会社があなたの家族に「社員に禁煙するように言ってくれ」と言ってきたらどう思うか
企業の広報が社外に向けて「当社は全社員禁煙を推進する」と大々的に発表したらどう思う か
タバコを吸う人はモテると思うか 尊敬されていると思うか、それとも軽蔑されていると思 うか その理由は何か
タバコ会社は昔はかっこいいタレントや有名なアスリートを使ってかっこいい CMを作り、 タバコを吸うことはかっこいいというイメージを作り続け、国民に喫煙はかっこいいという 錯覚を与えることに成功して来たが、現在は法律によってそうした CM を流せなくなった ため、喫煙はかっこいいと国民を騙す事で消費を促す戦略をとれなくなっている。 このため、タバコを吸うことはかっこいいというイメージは特に若い人の間にはなくなり、 若い人の間では喫煙はカッコ悪い、うらぶれた人が吸っていそうというイメージが強くなっ ている。そんな現在でもタバコを吸っている自分をどう思うか  
気づいたらタバコがなく、近くに売っているお店もなかったらパニックになるか 平気か
飲食店の喫煙・禁煙についてどう思うか
禁煙したら 1 千万円あげると言われたらどうするか 将来の値上げを考えると今の毎月 1 万円の出費が将来は月 2 万円、3 万円になり、今後 50 年間でのタバコ代は合計すると 1 千万円を軽く超える
タバコ代に消えていたお小遣いが 別のものに自由に使えたら何に使いたいか
喫煙者は税金をたくさん払う良い人だと思うか  
医療費や失火などタバコによるは損失の総額は 4.3 兆円にのぼり、タバコ税収の 2.1 兆円 の 2 倍以上になるがどう思うか


2 章ー2 禁煙しやすい環境を整えよう

就業時間中は禁煙に
禁煙しやすい環境を整えるため、就業規則に就業時間中禁煙を明記し、速やかに実行しまし ょう。
今までなんとなく認められてきた業務中に勝手に休む、職務専念の義務を放棄して休憩をと り、仕事をさぼる行為。
それは喫煙社員だけに認められた特別の権利ではありません。
そんなことをしたらダブルス タンダードとして非喫煙社員から訴えられるでしょう。

数十年前までは社員は在席のまま喫煙していました。その当時は喫煙のために職場を離れたらあまりに も明確なサボリ行為として処罰されたでしょう。
それが嫌煙意識の高まりとともに在席で吸えなくなり、緊急避難として室外で吸うようにな っただけで、本来はそこで業務中禁煙を強制すべきでした。
ですが当時の男性労働者の喫煙率は 80%程度と極めて高く、企業は業務中禁煙の強制を初 めから放棄し室外喫煙というサボリを黙認したのです。

喫煙率が 20%台となった現在ではもはや「緊急避難としての室外喫煙黙認」は不要です。
黙認されてきた勤務条件のダブルスタンダードははっきりと撤廃されるべき時です。
「タバコを吸う人は自由に休憩出来ますよ」という喫煙奨励政策を温存すべきではありませ ん。

就業時間中禁煙としただけで社員の喫煙率は 5〜10%下がるし、多くの喫煙者は禁煙を真剣 に考えるようになります。
就業時間中禁煙で禁煙しやすい環境を整えてあげましょう。

昼休みも外回り中も
就業時間中禁煙とする時に問題となるのが外回り中と昼休みの扱いです。
外回り中や営業車での移動中は業務時間中ですので禁煙させなくてはいけません。
問題は昼休み中禁煙の強制が「休憩時間自由利用の原則」という労基法に合致するかです。

これについては次の古い通達があります。
昭和 22 年 9 月 13 日次官通達 17 号  「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損 なわない限り許される」

会社は社員の行動に一定の規制を掛けることにより社内の秩序を守らなければなりません し、休憩時間は労働していない時間ですが拘束時間でもあり「次の労働に備えて休息してい る時間」です。
このため事業場内で自由に休息できる場合には、休憩時間中の外出に規制を加えても必ずし も違法にはならないとされるなど休憩時間の自由利用には様々な制限があります。
職場での喫煙は他の社員や顧客等に悪影響を及ぼす可能性が高い行為です。

このため「休憩時間」といえども禁煙を命令することはできると解釈され、すでに多くの企 業が昼休み中も含めた禁煙を実施しています。
企業が就業時間中禁煙としている、飲食店等で店舗部分などが禁煙となっている場合などは 上記の次官通達により認められる事例と言えます。

社内・敷地内を禁煙にしておいて昼休み中の喫煙を禁止しないと近隣の路上や公園等で喫煙 する社員が出てきます。
それはタバコの煙や吸い殻で近隣住民や近隣の社員に迷惑をかけ、会社のイメージを壊す事 になります。
喫煙社員の外回りの重点ポイントは喫煙場所。あの駅はあそこに喫煙スペースがあるそこに よってから回ろう。
昼休みが待ち遠しい、あと 1 時間我慢すればあそこに駆け込んでタバコが吸える。ああ待ち 遠しい。
喫煙社員が仕事そっちのけでそんなことを考えているとしたら、退路を断ってきちんとニコ チン依存症から回復させてあげる事こそが企業に求められているのではないでしょうか。

喫煙室撤去を宣言しよう
次に喫煙室・灰皿撤去があります 灰皿撤去・喫煙室撤去に半年も 1 年もかけていると禁煙運動の本気度を疑われ、そのうちお さまるだろうと感じさせて、禁煙推進に影響します。
プロジェクトの発表から 1〜3 か月で実行に移す事で喫煙者にプレッシャーをかけるべきで す。
喫煙社員が禁煙に取り組めばその時から灰皿は不要となります。
禁煙実行を決意するまで 1 か月かかったとしても発表から 1 か月後の喫煙室廃止でも十分 に間に合います。

喫煙室の完全廃止は来客の理解が得られないとおっしゃる企業さんがありますが、健康増進 法改正を契機に飲食店でも完全禁煙が増えており、そういった心配は杞憂と思われます。
そ れどころか、喫煙室の完全撤去を行わない場合、未だに社員や取引先の健康に配慮しない企 業とみなされ、企業のイメージを損なう恐れのほうが大きいと思います。
仮に来客専用の喫煙室であったとしても健康企業というイメージを損なう恐れが大きいの で残すべきではないでしょう。

健康手当支給を宣言しよう
喫煙社員の脳の活動低下による低い生産性等とのバランスをとるための、そして禁煙を奨励 するための非喫煙者への健康手当の支給は、禁煙への重要なインセンティブになると思いま す。
定期昇給の時に定昇分を財源にして月額 5 千円程度を禁煙者限定手当として創設、ボーナ スも対象にするかボーナス査定限定としても良いのではないでしょうか。
どちらにしても定昇分の振り分けや、ボーナス査定方法の変更だけであらたな財源がいらな い点が大きなメリットです。
3 週間の禁煙に成功した社員も支給対象にすればより一層禁煙へのモチベーションになる と思います。

禁煙者限定の健康手当支給は家族、特にパートナーからの禁煙の後押しになると思います。
タバコ代の支出に加えて健康手当がもらえないというのはパートナーにとってはダブルパ ンチです。
このダブルパンチは小遣い削減として喫煙社員に打ち返されるかもしれません。(笑)
家族向けの禁煙ニュースなどで、健康手当が大多数の人に支給さている事、喫煙者が減って いっていることなどを書く事でパートナーから喫煙社員へのプレッシャーが一層増えるの ではないでしょうか。
再喫煙した時は、今まで支給した健康手当全額分をマイナス査定すると伝えておけば再喫煙 の誘惑に耐えるためのツールとしても役立つと思います。
現実にはいないと思いますが、書類上は禁煙したと申告して健康手当をもらい、実は隠れ喫 煙していた、あるいは再喫煙していた人が出た時の対応も示しておいた方が良いと思います。
実際に非喫煙者に健康手当を毎月 3 千円支給しているティーペック株式会社さんではそう いう人はいないそうですが。

喫煙者不採用を宣言しよう
今は学生の喫煙率は下がっており、酒の強要と同じで喫煙を嫌う傾向が大きくなっています。
そうした学生にとって隣のデスクの人が紫煙の残り香をまとって働いているような環境を 進んで選択することはありません。
ましてその人が脳の機能が低下していているのに自分と 同じ給料だと知ったら不満に思うでしょう。
自分が働いているときに、気づくと喫煙室でさぼっている同僚がいるような不自然で不平等 な環境は、決して受け入れられるものではありません。
学生にとって喫煙環境も企業を選ぶ大事な基準です。
「喫煙者不採用」や「全社員禁煙」を打ち出した「社員の健康に気遣う企業」の方が就活生 にとっては魅力的に映ります。
すでに「喫煙者不採用」や「全社員禁煙」を打ち出した企業は、今までよりも優秀な人材が 集まって来ています。

採用に当たっては「全社員禁煙」等を応募者に分かるようにはっきりと記載する事をお勧めします。
「全社員禁煙」を打ち出す企業が極めて少なく、選択が限られている現状では「クリーンな職場環境」を希望する優秀な学生は必然的に御社を選択することになりますし、喫煙学生であっても 本当に入社を希望する学生は、応募期日までに禁煙するでしょう。
喫煙休憩など、さぼりやすい環境を維持してあげる、そうした社員を守ってあげる施策を続 ければ、そうした環境を享受しようとする人間が集まってきます。

喫煙者不採用は星野リゾートさんが打ち出した時にマスコミで大きく取り上げられ話題に なりましたが、より戦力になる社員を獲得しようとするホワイト企業にとっては、今では普通の施策 となりつつあります。
勝手に喫煙休憩をとる、職務専念義務を履行しない人は採用しないのは当たり前ですし、喫 煙者不採用を広報することで、なかなか禁煙に踏み出せない喫煙社員の外堀を埋める効果も あります。

色々な手段を使って広報しよう
広報部門など色々な組織を巻き込み、全社員禁煙・健康宣言、喫煙室・灰皿撤去や就業時間 中禁煙、喫煙社員不採用などを積極的に社外へ広報してください。
それは会社が健康経営・社員の健康増進に取り組んでいることを知ってもらい、企業のイメ ージを上げる、商談を有利にする、就活生や転職を考えている人に注目してもらうなどのた めですが、同時に社員に対しても会社が本気で取り組んでいることを示す事ができ、禁煙に 躊躇している社員の退路を断つ事ができます。

広報や自社 HP に掲載する等の他、社用便箋のレターヘッド、封筒、名刺などに「当社は全 社員禁煙運動を行い社員の健康を守ります」等入れる事も社外へのアピールと同時に喫煙社 員の退路を断つ施策となります。
運動の愛称なども「この愛称は社員が考えたものです」と添えていれる。
社員に公募したロゴなども「このロゴは社員がデザインしたものです」と添えていれる。
そ うしたことも社員を巻き込んだ活動をしていることのアピールになります。

このように広報部門などの組織を巻き込み協働することは、社内の一体感をより高め、運動 の一層の推進、社員の参加の積極化にもつながるのではないでしょうか。

ちょっと一息 小話コーナー  人類の黄昏
人類に社会というものが出来上がってから今までの間に、「社会的な人間」の 1 個体は「村」 から「家」へ「家庭」へ「一個人」へと縮小の道をたどってきました。
そしてその先にあるものは出生減少の行き着く先である「無」です。
この様にして「社会的な人間」の 1 個体縮小の流れは終わり、人類そのものの黄昏を迎える 事になるでしょう。

「村八分」という言葉がありますが「村」において「村八分」になると人は生産と生活から スポイルされ、その村で生きてゆくことが極めて困難になります。
それは「村」における人間の一個体が「社会的な人間」の一部でしかないということを如実 に示しています。
「村」における人間の一個体は「社会的な人間」の手の一部であり、足の 一部であり、一個体が「意思」を持つ事は許されません。「村社会」では 人権もほとんど認められません。

やがて「労働者」が生まれ、都市においては「家庭」が「社会的な人間」の 1 個体となり、 さらに家庭内の役割がクリーニング屋・飲食店・コンビニ等サービス業に取って代わられ、 様々な電化製品が充実してくると都市では「社会的な人間」は 1 個体で完結できるようにな りました。
やがて彼らは恋愛・子作りを「面倒なもの」「ハイリスク・ローリターン」とみなすように なり、子を残すという生物の枷・檻から抜け出そうとします。

その流れを別の面からみると「社会的な人間 1 個体」の縮小は「1 個体・個人の意思拡大」の流 れでもあります。
近年、インターネットによりマスコミでもない個人が発信できるようになると「1 個体・個 人の意思拡大」の流れは加速されています。

そして今や、「意思」は「人間」という生物の枠から抜け出し「機械・AI」の物になってゆ こうとしています。
それは「意思」に「人間」が必要ではない世界、まさに人類の黄昏を予感させます。


2章ー3 イベントで関心を引こう

運動を始めよう
全社員禁煙を始めるにあたって提案したいのが、この運動をみんなが関心を持て参加するイ ベント・お祭りにしてしまおうという事です。
イベントには例えば禁煙ニュースなどの愛称募集があります。
愛称などは誰でも思いつくことが出来ます。このように得意不得意があまりなく誰でも参加 しやすいものを呼び掛けてみてください。

この募集はアイデアが欲しいというよりも、愛称を考える事すなわち全社員禁煙運動に参加 してもらうことが目的です。
愛称などの応募作はその全てを表彰することで、応募者全員が運動の盛り上げに一役買った という感覚を持つことになります。
自分が考えたもの、自分が一役買ったものには関心が生まれますし、反対しにくくなります。
この様にして禁煙に無関心な人に関心を持ってもらうことから運動を始めるといいと思い ます。

色々な改革運動で一番重要なポイントは無関心な人に関心を持ってもらうことです。
全社員禁煙を実現した企業を見ても、一度関心を持ってもらいさえすれば禁煙は想像以上に 簡単に実現しています。
禁煙に無関心な人に無理に禁煙させることはお勧め出来ませんので、愛称応募などで運動に参加した感覚を持ってもらうやり方、その中で会社にあった手法等を探るなど、手を変え品 を変えて関心を持ってもらう事から始めて頂くと全社員禁煙はよりスムーズに進むと思い ます。

全体のイメージを見てみよう
これまでにアンケートや聞き取り調査を行い、喫煙の状況を把握し、何が必要かを考え、禁 煙しやすい環境を整えて来ました。
これからは喫煙社員に禁煙に取り組んでもらうのに有効と思われる施策提案の概要をお示 ししたいと思います。
これらは企業の状況に合わせて適宜取り入れ、あるいは修正などをして実施してください。
さらにはここに上がっていない新しいアイデアを出して取り入れ、工夫してより楽しいイベ ント・運動にしていって頂ければより素晴らしいと思います。

なお、1〜3 年で全社員卒煙に成功した企業さんでもこれほど多くの施策を実施されたわけ ではありませんので、自社が取り入れられるものを無理なく組み入れていただければ全社員 禁煙は達成できますので、ご安心ください。

実際に、株式会社ネクステージグループさんの場合は「楽しむ禁煙手法」を推奨する禁煙セ ミナーを精力的に開催してゆくというシンプルな施策だけでセミナー開始 1 年ほどで全社 員卒煙を達成されました。
ティーペック株式会社さんは「リセット禁煙」等が教えてくれる「楽しむ禁煙手法」ではな く、禁煙させるのが困難な「頑張る禁煙手法」で進めたにもかかわらず 2 年 9 か月で全社員 禁煙を実現しています。
このことは「会社が禁煙を宣言」して真剣に取り組めば全社員禁煙がいかに容易く実現でき るかを示していますので、焦らず出来るところから取り組んで見てください。

◎全社員禁煙運動に関心を持ってもらうために役立つと思われるイベント
禁煙推進のアイデア募集
禁煙推進プロジェクト名・禁煙ニュース・ポスター・禁煙メンター・ありがとうカード・ラ ンチミーティング等の愛称・ロゴ等を募集。
禁煙メンターのユーモアのある称号・ロゴ等を募集。
以上の募集で何十、何百も集まった作品全てに付ける賞のユーモアのある名称を募集
社用便箋・封筒・名刺等に記載するプロジェクトロゴやデザインの募集 4 コマ漫画などみんなが親しめるツールやみんなが参加しやすくなるツールを募集
各課対抗喫煙率低下コンテスト
社員の 3 週間禁煙達成を祝う会
禁煙挑戦者による1日 500 円禁煙貯金コンテスト

◎喫煙の真実や社内の現状を知ってもらうための施策
社員向け禁煙ニュースの発行
喫煙者家族向け禁煙ニュースの発行
禁煙ニュースを週次打合せ等で読み合わせ学習する
禁煙ポスター・壁新聞の発行
(調査チームやプロジェクトチーム等の会議内容は必ず社員に知らせましょう)

◎禁煙運動に参加してもらうのに役立つと思われる施策
禁煙メンター募集 (3 週間以上禁煙中の社員と非喫煙社員)
家族サポーター募集
禁煙メンターに「ありがとうカード」を贈る運動
ランチミーティングの開催
ランチミーティング参加者募集とセッティング
社用便箋・封筒・名刺等に禁煙プロジェクトロゴ等を入れる
運動の状況を積極的に広報する
人事・総務・健康管理担当・衛生委員会・産業医・保健師はもちろん広報部門や健保組合・労組などと協働・連携して施策を推進する
個人カルテを作成し禁煙をサポート
部門・課・係単位でのカルテを作成し禁煙をサポートし、禁煙達成を競う
禁煙開始後 3 日間そして 3 週間のサポート体制を作成・運営
禁煙健康手当創設

◎常に状況を把握し、見直す
定期的に社員や家族等に対するアンケートや各部署・部門長への聞き取りを行い現状を把 握・分析し必要があれば追加・修正・廃止する。
常にトップに報告するとともに、プロジェクトの各イベントへも頻繁かつ継続的に参加・関 与してもらう。
それではこれらの施策の内容を見て行きましょう。

アイデアや愛称などを募集しよう
はじめに禁煙プロジェクトや禁煙ニュースの愛称やロゴなど、さらには全社員禁煙を推進さ せるアイデアなどを社内公募しましょう。
これら社内公募の目的は全社員禁煙プロジェクトが発足したことを知ってもらう事と、特に 喫煙社員に参加意識を持ってもらう事にあります。
全社員禁煙の方針をトップが 1 回語りかけても、社員全員が「よし、一緒に推進しよう」と 思ってくれるわけでは決してありません。
喫煙社員の一部には「嫌なことを決めてくれて」と顔を顰める人もいるでしょう。
ですがこのプロジェクトの成否はそうした顔を顰めた人を巻き込めるかどうかにかかって います。

研修会なども重要ですが、本人が前向きになる前にタバコの害を説く研修会などへの参加を 指示しても、そうした人は出席を渋るか、出席しても斜に構えたままで帰ってゆくケースも あると思います。
そこで最初に始めたいのが愛称募集などの,誰でも参加できるイベントでそうした社員の心 をほぐしておくことです。
募集するのは例えば、禁煙プロジェクトや禁煙ニュース、禁煙ポスター・禁煙メンター及び メンターの称号・ランチミーティング等の愛称やロゴ
社用箋のレターヘッド、封筒や名刺などに記載する禁煙プロジェクト告知デザイン
全社員禁煙を推進させるアイデア
応募作に与える表彰の名前募集(「うまいで賞」とか)
禁煙推進 4 コマ漫画など親しみやすいツールやその愛称・ソフト等の募集など

これらは全社員が必ず 3 つ以上応募させるなどして、必ず全社員が参加するようにすると 良いでしょう。
部課等で応募件数を競ってもらうのも良いかもしれません。
もちろんトップや幹部にも出来るだけたくさん応募してもらいましょう。
こうすることで社内での会話に上るようにし、嫌でも何か考えざるを得ないようにし、参加 しないと取り残されるような雰囲気を作ってゆきます。
そして応募作は漏れなく表彰して禁煙ニュースやポスターなどでも発表し表彰しましょう。 もれなく賞金を出すのも良いでしょう。
あくまでもお祭りなので、良いご縁がありますよ うにで 5 円とか百円とか少額で十分、あまり大きな金額にしない方がいいと思います。

斜に構えている社員も後ろ向きな社員も社内公募などのお祭りで表彰されたりすると、ウザ いとは感じながらも何か自分もプロジェクトに参加している気分になると思いますし、周りも「一緒に参加してる人」といった見方になってくると思います。
こうしたお祭りで心の壁を取り外してプロジェクトを始めてゆくと後々スムーズに運ぶの ではないでしょうか。

禁煙ニュースなどで学習と情報共有
禁煙ニュース発行の目的は、1 つには会社が社員の禁煙に取り組んでいることを知ってもら う、重要な施策と位置付けていることを社員にはっきりと認識してもらうという事です。
もちろんトップや幹部のメッセージを伝え続ける事も重要です。
もう一つはタバコ教育・学習です。
喫煙により脳が機能低下している事、タバコの良さと感じるものが全て錯覚であることを知 ってもらう。
喫煙が客や取引先、家族や住民から嫌われ会社の評価を落とすこと、さらにはタバコやニコ チンの依存性や凶悪性・害、各国の禁煙の状況や国際機関の行動などを紹介する等です。
4 コマ漫画を入れる等読みやすく親しみやすい物とする工夫も探ってください。
この本に書いてあることも学習資料として利用いてください。

もう一つは喫煙に関する社内の様子などを紹介して共有し、参加してもらう事です。
プロジェクト会議の報告はもちろん禁煙アイデア募集や愛称募集、ランチミーティングの事 とか禁煙決意者・禁煙成功者紹介やその声・禁煙メンター等を紹介したり、部や課・係の取 組みなどをレポートしたり、家族の声を紹介したり、他社の取り組みを紹介するなどが考え られます。

禁煙ニュースなどは、ただ渡すだけですと禁煙に関心がない人は見てくれないので、週次の 打ち合わせで読み合わせし、全員が必ず目を通し、禁煙ニュースをもとに禁煙に対する考え を話し合えるようにする、あるいは雑談の話題に上るようにするなどのことが重要です。
そこで出た声をプロジェクトチームに上げてもらい禁煙ニュースに反映させたり、施策に反 映させて行けると良いですね。

禁煙ニュースは A4 程度のものを毎週発行して、一つの号にはあまり多くは詰め込まない ほうが通常業務に負担がかからずに受け入れやすいと思います。  
あまり詰め込むと、こんなの配るだけでいいだろ、わざわざ全員に読ませるなんて業務の邪 魔だという声が出てきかねません。
禁煙ニュースの内容も、読み合わせは面倒と思われるのではなく、読み合わせは面白いと思 われるような興味を引く内容に出来れば最高です。

タバコ・喫煙は脳の機能を低下させるなど多くの害がある、会社は全社員禁煙を最後までや る気であるという共通認識を何度も常に再確認していないとやがて不満や反対・サボタージ ュが生まれて運動は形骸化してしまいます。
禁煙に成功しても再喫煙の恐れが高いので、全社員禁煙が達成できた後も、発行頻度は下げ たとしても、禁煙ニュースは永続させてください。

喫煙者家族向けの禁煙ニュースも発行の目的は社員向けと同じです。
1 つには会社が社員の禁煙を重要な施策と位置付けていることを社員の家族にもはっきり と認識してもらう事であり、喫煙に関する社内の様子などを紹介し、共有してもらう事です。
もう一つは社員向け禁煙ニュースと同じくタバコ教育です。
この家族向けの禁煙ニュースを利用して、社員禁煙運動への賛同と協力を求める事は禁煙運 動推進に大いに役立つと思います。

ありがとうカードを渡そう
喫煙者から禁煙メンターに「ありがとうカード」を贈りましょう。

禁煙に関心を持たせてくれた禁煙メンターに感謝を込めて、
禁煙の決意を後押ししてくれた禁煙メンターに感謝を込めて、
禁煙開始からの 3 週間をサポートしてくれた喫煙メンターに感謝を込めて、ありがとうの 気持ちを伝える「ありがとうカード」贈るようにします。
喫煙者から禁煙メンターにありがとうカードが贈られた事を禁煙ニュースや壁新聞で紹介 することで禁煙メンターへの感謝を企業全体へ広げ、同時に禁煙活動の広がりを全社員に認 識してもらいましょう。

禁煙メンターは「ありがとうカード」を贈られた事、禁煙ニュースや壁新聞で紹介された事、 カードの獲得枚数が増える毎に愉快な称号を与えられることなどで承認欲求が満たされて やりがいが出ますし、もっと多くの喫煙者を導いてあげたくなるでしょう。
非喫煙者ではない、自らも禁煙挑戦中の禁煙メンターにとってはそれは自分自身の禁煙継続の力にもなります。

3 週間禁煙達成を祝おう
ニコチンの離脱症状(禁断症状)が強いのは最初の 3 日間です。
そして 3 週間禁煙すると離 脱症状はほとんどなくなります。
ですので、禁煙が 3 週間続けば禁煙が成功したと言っていいと思います。
そこで 3 週間禁煙の達成を祝ってあげることで、ニコチンに打ち勝ちったことを称賛し、こ の後も禁煙し続けられるという自信に繋げてもらうことが大事となります。
3 週間禁煙達成者として禁煙ニュース等で社内に発信すれば本人の誇りと自信と継続の意 思をさらに深めるでしょう。

3 週間禁煙達成者をお祝いするとともに禁煙の経験を語ってもらう、これを契機に禁煙メンターになって今度は自分 が同僚をサポートする立場になってもらう場とすると良いと思います。
禁煙メンターになって他の社員を禁煙に導くことは、自身の禁煙理由の再確認となるので、 禁煙の意志がさらに強まることになります。
3 週間禁煙を達成した人を禁煙メンターに引き込むのは、元喫煙者が語り掛けたほうが、禁 煙に批判的な人や無関心な人も身構えることなく話を受け入れやすくなるからでもありま す。

ちょっと一息 小話コーナー  子供はかけっこ 大人は金持ち
胎児は、生命発生から人類に至るまでの形態を経て大きくなり生まれますよね。
尻尾を持った両生類のような形から尻尾がなくなり、猿のような形を経て生まれてきます。
同じように誕生後の人間の好みなども大昔の人類が持っていた好みを経て現代人のそれへ と変わってゆくのではないでしょうか。
例えば小さい女の子はかけっこが早い男の子が好きですね。
これは狩猟採集を行っていた時代の稼ぎの良い男の条件だったからだと思います。
やがて大人になると金持ちの男や金を稼ぎそうな男が好きになります。
現代社会はもう狩猟採集の時代ではありません、かけっこが早くても稼げないからです。
このように女の子も成長し考えが変わるのです。


2章ー4 タバコが必要ない人になってもらおう

ちょっと一息 小話コーナー A さんの禁煙ミニドラマ
業務時間中禁煙になって、なんだよそれって暴れたくなりましたよ。
禁煙なんかするかよって思ったけど、職場で喫煙できないプレッシャーは半端でなかったで すよ。
昼休み前とか終業時間前とか吸いたくてモヤモヤイライラが止まらないし。
それで昼休みも 吸うなって言われるし、終業時間が来るのがあんなに待ち遠しかったことはなかったですよ。
仕事のストレスにタバコを吸えないストレス、あれはひどかった。

そして仕事が終わって会社を出てすぐのあの 1 本、いや最高にうまくって、もうタバコ最高 って、愛してるよタバコちゃん一生離さないからねって感じですよ。
ちょっと詰まったら喫煙室にいって美味しいタバコをゆっくり味わって、いい気分になれて 喫煙仲間と雑談で盛り上がってと、あの幸せな時間が奪われた僕の気持ちわかってもらえま す?え?タバコ吸わない人にはそんな幸せな時間もらえませんでしたよって、そういわれて もタダで自由に休めるなんて喫煙者様ご優待のラッキーな制度に乗らなかったあなたがチ ョットあれだったんじゃありません?普通乗るでしょ?
そんなことはともかく、トップや上司から会社の方針として喫煙をやめるように言われてプ レッシャーだし、それも事ある毎に言われて本気度が伝わってくるのはマジで勘弁してほしかったですね。
街で知らない人にタバコ吸わないでと言われたって余計なお世話だよで済みますけど、会社 に言われるとね。

禁煙ニュースなどの愛称やロゴ募集などでみんな盛り上あがっていて、なんか疎外感?いっ ぱいだし。
お前もなんか出せと言われてしょうがないから付き合いで応募したら「もう少しで賞」とか で表彰されて賞金百円もらっちゃって俺の気持ちは「困ったで賞」みたいな気持ちに「なっ たで賞」ですよ。
禁煙ニュースなどを週次の会議で声に出して読みあうなんてほんとプレッシャーでやめて ほしかったですよ。

禁煙ニュースなどで今まで信じてきた美味しいタバコというのが完全な錯覚だ、タバコで脳 の機能が低下しているとか、非喫煙者と比べると楽しむことが出来ないとか、食べても美味 しいと感じにくいとかって色々言われてほんとに驚いたけど、そんなバカなこと信じたくな いし。
タバコの害だとか体に悪いだとかだったら耳タコ位聞かされてるんで今更だけど、脳が機能 低下ってホントならかなりショックで、俺にとってはタバコ正義だったですからね。
家族から会社が禁煙しろと言ってきているんだから、良い機会だから禁煙してと迫られもう いい加減勘弁してと逃げ出したい気持ちでしたよ。分かってくれます?
しかも禁煙しないと健康手当もらえないんでしょ、当然その分お小遣い減額よって、ごめん なさいそれだけはやめてください。兵糧攻めは卑怯です。タバコ買えなくなります勘弁して ください。

少し前まで吸ってたやつが禁煙したとたんに禁煙メンターとかなにかになったとか言って 「相談に乗ってやるよ」とかニヤついて言ってくるし、なにあれ勝ち誇ってるんですか、そ うですよね。
昼めし食いながらいろいろ教えてやるよって、そんなのタバコがマズくなるから結構です。
仲間が禁煙ニュースに感化されたりランチミーティングに参加したりして、今まで喫煙仲間 だと思っていたやつが禁煙の軍門に下ってゆく寂しさ分かってもらえます?

前だったらこんな時は仕事やめて喫煙室にいって美味しいタバコをゆっくり味わって、喫煙 仲間と世知辛くなったねえなんて雑談で盛り上がって、と幸せな時間過ごせたのに、昔はあ んなに喫煙者を優遇してくれたのに手のひら返しですよ。
もう意地になっちゃうか禁煙するかの 2 択を迫られ崖っぷちですよ。前門の虎後門の狼?ど うしたらいいと思います?え?禁煙したら?って、そうですよね、あなたならそう言うと思 いました。

まあ冷静に考えれば辞め時ですよね。俺は一生タバコ正義だったはずなのになぁ。
禁煙ニュースに書いたあったことホントに本当ですよね。
タバコがうまいって言うのは錯覚 だって、タバコで脳が機能低下してるって、楽しさや美味しさが感じにくくなってるって、 分かりましたよ。今度ランチミーティングに参加してみますわ。
禁煙メンターになって相談乗るよって言ってきたあいつに昼休みにでもいろいろ聞いてみ ますよ。
ほんとにタバコは旨いなんて全部錯覚だと理解したら禁煙楽に出来ます?嘘じゃないです よね。 みんなも出来たって言うし、やってみますか。ここらが年貢の納め時かな。家族も喜ぶし。

やあ久しぶりですね。その後どうですか。俺はすっぱり禁煙できましたよ。すごいでしょ。 褒めてくれていいですよ。
今はもう気分スッキリ、体調も良いし飯もうまいし家族も喜んでるし言うことないですよ。
それで最後まで抵抗していた B がいたでしょ。俺いまあいつに錯覚から目覚めて禁煙しない かって言ってるんですよ。すごいでしょ。褒めてくれていいですよ。今週中には禁煙始める んじゃないですか。
これで我が社も全社員禁煙達成。すごいよね。まさか俺が我が社の全社員禁煙達成に貢献す るとは思わなかったな。すごいでしょ。もっと褒めてくださいよ。もしかして俺表彰されちゃったりします?え?そんなうれしいわけじゃないですよ。いやだなあ。
それじゃ、全社員禁煙達成祝賀会で。

「関心」がキーポイント
前ページに登場した社員 A さんのように禁煙に全く関心がない社員の場合は禁煙化は一筋 縄ではいきません。
禁煙に関心のない人に対する働きかけで一番重要なことはまず禁煙に関心を持ってもらう 事なのですが、タバコの錯覚から抜け出してもらうには、皮肉なことにニコチン依存症の離 脱症状が軽い事が障害となります。
そのため自分が重大な依存症に罹患しているという自覚を持てず、タバコを止めることの必 要性を感じにくいのです。
また、健康など全く関心がない人、健康がインセンティブにならない人には喫煙者本人の健 康被害や受動喫煙の被害を話しても余計に殻に閉じこもってしまう場合もあります。

そこで初めは、関心のない人も参加できる、そして一緒に作ったプロジェクトと思ってもら えるようなイベントを行うことが良いと思います。
例えば禁煙ニュースの愛称募集とかユニークな賞の名前の募集とかだと、誰でも参加できる のではないでしょうか。
愛称募集とかも自由参加ではなかなか応募してくれないでしょうから全社員が必ず応募す るようにした方が良いと思います。

このように上から言われて応募したとしても「応募内容・アイデアは自分で考えた」わけで すし、表彰されるとかもあったりすると自分で参加したイベントという感覚がそこはかとな く出てくるものです。
このようにどんな小さなことでも「自分も参加した」実感があると関心が出て心を開いてく れやすくなります。
楽しいイベントでも「参加させられている感」があると関心を持てませんのでその点は注意 してください。

そうしてプロジェクトや禁煙に関心が向かえば後は比較的簡単に進んでゆくと思います。
就業時間中禁煙にすることなどで外堀を埋め、昼間は吸えないという本人には苦しい状況を 作り、これを機会にやめるしかないと腹をくくってもらうように持ってゆく。
タバコの「良さ」と思っていたことがすべて錯覚だという真実、自分の心身や脳がニコチン によって侵され低下していることを知ってもらい、ニコチンによる束縛から離れる決心をし てもらう。

その上で正攻法で会社の方針としてプレッシャーをかける事で禁煙するように説得する。
会社や同僚が禁煙をサポートする体制が整っていることを分かってもらい、「リセット禁煙」 などの本を読んでもらい禁煙に対する不安から逃れてもらう。
そうすれば喫煙者本人も苦しむことなく禁煙を達成できるでしょう。

最後は雪崩のように
喫煙者の中で今まで一度もタバコを止めようと思った事がない人が1〜3 割います。
ですが会社の中で同僚たちが次々に禁煙し始めると、そんな人も取り残されたように感じ、 心細くなり、意固地になっていた心の窓を恐々と少しづつ開け始めます。
そして喫煙者の割合がある線を下回ると雪崩を打って禁煙を始めます。
これは集団の効果で、企業が禁煙をさせる時に有利な点です。
自治会が住民に言ったり、行政が住民に呼び掛けても決して得られない有利な点です。

この効果があるため、それほど多くの施策を実施しなかった企業でも 1〜3 年で全社員禁煙 化を達成しています。
「楽しむ禁煙」という楽なやり方を知らずに、禁煙が難しい「頑張る禁煙方式」で進めた企 業でさえ 3 年もかからずに全社員禁煙化を達成しているほどです。

会社が禁煙に力を入れると初めのうちは順調に禁煙が進みます。 喫煙者の多くが元々禁煙したいと考えていたため、就業時間中禁煙の措置を取っただけで喫煙者の 2〜3 割の人が禁煙し、喫煙率にすると 5〜10%程度の低下が見込まれます。
しかし禁煙に関心を持たず、喫煙がもたらす脳の機能低下や喫煙が与える誤解を解こうとし ない「禁煙に無関心な岩盤層」を残したままであった場合は、喫煙率が残り数%になった時 に壁にぶち当たります。

この対処法で一番いいのは最初にイベントに巻き込んで「禁煙に無関心な岩盤層」を「関心 層」に変えておくことですが、それでも届かなかった人が残った時もトップや幹部が本気を 示し続けながら運動を進めてゆけば、同僚に喫煙者がほとんどいなくなったという四面楚歌 な日常にだんだん耐えられなくなり、最終的には雪崩を打って禁煙を始めます。 喫煙者は必ずゼロになります。自信を持って禁煙運動を進めていってください。

苦しまずに出来るんです
本人の努力と周りの支えで喫煙社員がいよいよ禁煙を考え始めました。
ここで大事なことは「もうタバコを吸わないなくていいなんてうれしい、素晴らしい事 だ」と思ってもらう事です。
もし本人が、「離脱症状は最初の 3 日間が大変らしい、3 週間頑張れば禁煙はほぼ成功との 話だから、とにかく 3 週間根性で乗り切ろう」という気持ちであったら、禁煙はツラい物と なります。
しかもそのように努力して一旦は禁煙に成功しても多くの人が再喫煙してしまう恐れがあ ると言われています。

禁煙をサポートする本を読んで「もうタバコを吸わないなくていいんだ。実に素晴らしい。」 と思える、自分でそのような結論を出せるようになるまでサポートしてあげると「楽しむ禁 煙」になり、禁煙が楽に進みます。
一見手間がかかるようですが、そうすることで禁煙の成功率は格段に上がりますので、結果 として近道になりますし、本人も苦しまずに済みます。
このときに使用する禁煙をサポートしてくれる本のおすすめは次の 2冊です。

「リセット禁煙」(磯村毅著 PHP 出版)  
「禁煙セラピー」他多数(アレン・カー著 KK ロングセラーズ)

「リセット禁煙」著者の磯村毅医師はアレン・カー氏の「禁煙セラピー」に感銘を受け、そ れにご自分の禁煙治療の経験を踏まえて、患者さんに分かりやすく理解してもらおうと「リ セット禁煙」を書かれたそうです。
この 2冊でしたらどちらの本でも読めば禁煙は怖くないと分かりますので、禁煙を始めよう としている人の大きな助けになると思います。是非勧めてみてください。

タバコの詐欺師は 3 週間で消える
喫煙者はタバコに騙されているので、喫煙すると頭がすっきりして良いアイデアが湧く、食 後の一服が食事をより一層美味しくさせてくれると思っています。
これは継続的な喫煙がもたらす脳の機能低下の結果ですが、その脳の機能低下も禁煙学(日 本禁煙学会編集 南山堂)によると、ニコチンの渇望感は禁煙後 2〜3 日がピークで 3 週間 でほとんど消えます。

ニコチンの体への影響は 3 週間程でほとんどが消えるのですが、その 3 週間の回復の過程で 一時的に悪化したような症状(好転反応)が現れることがあります。 (以下「禁煙学」より抜粋)
その内容は、10%の人が禁煙開始後 1〜2 日の間でめまいを、
25%の人が禁煙開始後 1〜7 日の間で眠気・ 不眠を、
15%の人が禁煙開始後 1〜3 週間の間で便秘・上腹部痛を、
50%の人が禁煙開始後 1〜2 週間の間でイライラ感を、
50%の人が禁煙開始後 2〜3 週間の間で怒りっぽくなり、
60%の人が禁煙開始後 2〜3 週間の間で集中力の低下を、
60%の人が禁煙開始後 2〜3 週間 の間で疲れやすさを、
70%の人が禁煙開始後数週間の間で食欲の増加を感じる場合がありま す。

タバコの離脱症状(禁断症状)は初めの 3 日間が最もきついのですが、きついとは言っても 朝起きてタバコが吸いたいと思うときと同じ程度のものです。
アルコールやヘロインなどの離脱症状に比べるととても軽いのです。 タバコの詐欺に気づけば禁煙は簡単です。しかも禁煙は 3 週間で勝ち取れるのです。

自分で考えてもらおう
タバコが必要ではない人になってもらうためにはタバコの真の姿を知ってもらう事が一番 重要なのですが、それが与えられた知識でとどまっていると、いざ禁煙を始めたときに脳内 の小悪魔たちに足元をすくわれることがあります。

ですから禁煙を確実に成功させるには、タバコの真の姿を知ってもらた後は、そのことを反 芻し自分の考えにまで高めてもらった方が良いです。
タバコは本当に必要か、喫煙者の脳はどうなっているのか、そのストレスは仕事によるもの なのか、喫煙によって消えるストレスは何か、禁煙は本当につらいのか、禁煙を始めるとど ういう事が起きるのか、その間どう対処すると楽しく過ごせるのか、3 日間・3 週間の禁煙 を達成すると何が起こるのか、それらのことを自分で考えて答えを探ってもらう事が禁煙の 確実な成功のための助けになります。

禁煙メンターに付き添ってもらいながら自分の考えを確かめてゆく。
そのうえで取り組み始めれば禁煙を楽しんで、禁煙後の自分を楽しみにして、タバコが必要 ではない人に簡単になることが出来るでしょう。

合格率が上がった!
「リセット禁煙」著者の磯村毅医師が 2004 年に河合塾さんと共同研究した結果、禁煙する と受験の合格率が上がるというデーターが出たそうです。
以下は浪人生を 3 つに分類した時の大学受験合格率です。 (磯村毅医師の本より)

浪人前から非喫煙だった受験生の大学合格率 40.7%
浪人後も喫煙を続けた受験生の大学合格率 25.9%
浪人後禁煙に成功した受験生の大学合格率 36.8%

禁煙に成功した浪人生は受験までわずかな期間しかなかったにもかかわらず非喫煙受験生 の合格率に匹敵するような成果を得られたのです。
禁煙期間がもっと長かったなら、非喫煙受験生の合格率にさらに近づけたのではないでしょ うか。
喫煙受験生はタバコを吸うと落ち着く、集中して勉強ができると感じてタバコを吸うのです が、それらはすべて錯覚ですので喫煙受験生の合格率が著しく低いというこの結果は当然と 言えましょう。
喫煙社員も「タバコを吸うと落ち着く」「集中して仕事ができる」という錯覚のもとに喫煙 していますが、喫煙受験生と同じくそれは錯覚であり、実際には仕事の成果は平均すれば非 喫煙者を下回る状態になっていると考えられます。


2 章ー5 挑戦者をみんなで支えよう

支える体制を作ろう
全社員禁煙運動の成果が上がり、禁煙を考え始めた社員が生まれてきました。
ここではそうした禁煙希望者をどのように支えて、気持ちよく禁煙を達成してもらうかを考 えて行こうと思います。禁煙のサポートというと一般的には研修会開催やカウンセラー設置、禁煙外来費用の助成な どが行われますが、研修会は一般的には頻繁には開催できないなど、それぞれの限界があり 残念ながら効果は限定的です。

禁煙により喫煙者が失うものは何もないのですが、喫煙者本人は多くのものを失うのではな いか、禁煙はどれほど苦しいのかと恐れています。
タバコを吸った後の頭がさえる感じ、食後のあの美味しい一服が出来なくなるのは嫌だとか、 タバコを我慢するなんて無理だ、禁煙はきっと苦しい、美味しい一服を我慢してなぜそんな苦しいことをやらなきゃいけないんだとか。
そうした恐れを禁煙外来費用の助成などの一般的な施策だけでは十分に拭い去ることはで きません。

そこで提案したいのが社員同士で支えあうというやり方です。
すでに禁煙を経験し成功した社員や非喫煙社員などに「禁煙メンター」になってもらってグ ループで、あるいは 1 対1 で昼食をとりながら相談を受け、悩みを一緒に考え、不安を取り 除き励ましてもらい、一緒に禁煙に立ち向かってもらうのです。
喫煙社員家族に「家族禁煙サポーター」になってもらい、「楽しむ禁煙」の手法を知った家 族に支えてもらうのも大きな力となります。

企業側でも人事・総務・健康管理担当・衛生委員会・産業医・保健師はもちろん広報部門や 健保組合・労組などとの協働・連携を行って総合的に支えてあげます。
楽しむ禁煙は、頑張る禁煙に比べて禁煙成功率が格段に高いのですが、組織の支えがない場 合は 2 割程度は途中で脱落してしまいます。
ですが企業が同僚が家族がみんなで支えて、楽しむ禁煙に取り組めば脱落者を生むことなく 全員が禁煙に成功することでしょう。

「楽しむ禁煙」で禁煙に取り組んだある企業は禁煙セミナーを頻繁に開催することで、開始 後1年で全社員卒煙を達成しています。
禁煙成功率が低いと言われる「頑張る禁煙」で禁煙に取り組んだ企業でさえ 3 年もかからず に全社員禁煙を達成しています。
企業が本気になって取り組み、支えれば全社員禁煙は容易く実現できます。 是非喫煙社員をみんなで支えて、禁煙に導いてあげてください。

3 週間禁煙した人にはメンターになってもらおう
ニコチン依存症の離脱症状(禁断症状)などは禁煙後 3 週間でほぼ消えます。
3 週間禁煙すれば一旦は禁煙に成功したと言える状況です。
ですからその成功体験を直ちに他の喫煙社員に伝えてもらいましょう。
喫煙社員も今まで喫煙者だった人の実体験なら受け入れやすいものです。

ですから 3 週間禁煙した社員には禁煙メンターになってもらうように働きかけてください。
禁煙に成功したあなただからこそ喫煙社員を救える事、救ってほしい事、禁煙に成功した人 として評価していることを伝えてお願いしてみて下さい。
もちろん非喫煙者にも禁煙メンターになってもらうように働きかけましょう。

人は自分が誰かの役に立つこと、感謝されること、誰かに慕われることは非常にうれしいも のですし、自尊心も高まります。
そうした事は生活にも仕事にも良い影響を与えてくれるでしょう。
さらには、喫煙者に禁煙を呼びかける役割を負う事は本人の禁煙継続をより確かにしてくれ ます。 一旦禁煙に成功した人の再喫煙率は相当高いのです。
ですが、自分が禁煙を勧める立場になる事で再喫煙に対し大きなブレーキとなります。

禁煙メンターにお願いするのは誰にでもできる簡単なことです。 昼休みに一緒にご飯を食べながら自分の禁煙の様子、その時の心の葛藤を話す。
「リセット禁煙」「禁煙セラピー」などの本を一緒に読むなどして喫煙に 対する不安を解消してあげたり、禁煙の先輩として相談に乗ってあげる。
禁煙を始めた人を 3 週間サポートしてもらう。
特に離脱症状が強い最初の 3 日間は頻繁に声 をかけるなど重点的にサポートしてもらいます。
そして禁煙メンターのサポートで 3 週間の禁煙に成功した社員には、今度は自分が禁煙メン ターとして喫煙社員をサポートする側に回ってもらいます。

禁煙メンターになってくれた人は禁煙ニュースなどで紹介し、誰でもサポートを受けられる ようにします。
プロジェクト担当者等は喫煙者と禁煙メンターとのマッチングを積極的に図ってください。
喫煙メンター同士のランチミーティングを開催してメンター同士の交流や、先輩禁煙メンタ ーの経験を広めることも有効です。

多くの社員に参加意識を持ってもらうための遊びとして、「ありがとうカード」獲得枚数に より、禁煙メンターに”仲間に力を与える者” ”禁煙に挑むものを導きし者”など様々な 愉快な称号を与える事も面白いのではないでしょうか。
楽しくやった方が社員同士の話題にも乗りやすく、関心を引きやすいですから、面白楽しく やりましょう。

ランチミーティングでゴールを目指す
禁煙を考え始めた社員同士、あるいは禁煙メンターも入ってもらって 1 対 1 であるいは複数 で、お昼休みに近くのラーメン屋で、あるいは会社の食堂や休憩スペースで、タバコによる 錯覚や脳の機能低下について「リセット禁煙」などをもとに一緒に学習する、禁煙した人に 禁煙の経験を教えてもらうランチミーティングを開きましょう。
昼休みに集まる会なら研修会と違って業務の邪魔になりません。

研修会は毎日開くようなことは出来ませんがランチミーティングなら毎日何か所ででも開 催出来ます。
一方的に聞く時間の多い研修会とは違って、疑問や不安な点を皆で調べて皆で考え皆で答え を出せるのがランチミーティングの良い点です。
昼休みのランチミーティングは、今まで話したことがなかった他部門の人とも親しくなれる 機会にもなり、一緒に禁煙すれば励ましあえるし連帯感も生まれます。
参加することが楽しくなる、禁煙が楽しいと思えるようになってもらう、そんな運営ができ れば大成功です。

トップにもランチミーティングに何度も顔を出してもらいましょう。トップの本気度が伝わ ります。
誰が呼び掛けてどこでランチミーティングが開かれるのかすぐにわかるようにするととも に、参加していない人にはそれとなく声をかけるようにしましょう。
禁煙希望者と禁煙メンターのセッティングも是非行ってください。
禁煙メンターが禁煙に成功した人である場合は、禁煙中に経験したこと、禁煙で変わった生 活や考え方など、これから喫煙を始めようとしている人が知りたい生の声を伝えてもらう事 が出来ます。

ランチミーティングの指導者は社員ボランティアである禁煙メンターや「本」になってもら いますから費用もほとんど掛かりません。
「指導者」になってくれる本は何度か紹介している次の 2冊です。

「リセット禁煙」(磯村毅著 PHP 出版)  
「禁煙セラピー」他多数(アレン・カー著 KK ロングセラーズ)

どちらも基本的な内容は同じですので、気に入った本を読んで、書いてあること に納得出来るようになれば禁煙を自然に決意出来るでしょう。
ランチミーティングや週次打合せなどの場で「禁煙に関心を持ちました」「禁煙に挑戦しよ うと思います」「0 月 0日から禁煙します」などの宣言カードを書いてもらう、禁煙メンタ ーなどに「ありがとうカード」を渡してもらうのもいいのではないでしょうか。

会合で自発的に話し合い自発的に決めた事には、その活動を高める・決意を固くするという 効果があります。
集団活動自体が他のメンバーの考えや行動に合わせやすくなったり、その集団に帰属するた めに集団の規範を守りたいという気持ちを起こさせるという効果が知られています。
さらに決意が表明されたその場でみんなで祝うことで本人の決意・やる気を高めてくれます。
みんなで禁煙というゴールを手にできるように応援してあげてください。

家族にサポーターになってもらおう 
喫煙社員の家族の協力を得ることは禁煙推進の大きな力となります。
家族の側から見ても、喫煙社員である家族が禁煙すれば家庭での受動喫煙が減り、タバコ代 も不要となり、健康手当が出る会社ならそれももらえるようになり、ベランダや庭先での喫 煙で周りから白い目で見られることもなくなりますので、大きなメリットがあります。

家族には全社員禁煙運動の内容やメリットなどを禁煙ニュースなどで積極的に知らせて、共 感して家族サポーターになってくれた人には教育資料や「リセット禁煙」等の禁煙をサポー トする本を渡し、脳の機能低下や楽しんで簡単に行う禁煙などタバコや禁煙に関する情報、 禁煙のサポート方法などを学んでもらい、喫煙社員が禁煙を決意するよう促し、禁煙を開始 したら適切にサポートしてもらえるようになってもらいましょう。
可能であれば社員と家族が一緒に参加する禁煙サポート研修会を開催することも考えてく ださい。家族と一緒に学べば一層の効果が期待できるでしょう。

抵抗が起こらない対策
どんなに素晴らしい改革にも、非の打ち所がない様に見える改革にも必ず反対する人・抵抗 する人がいます。
それは今の生活を壊されたくないという自己防衛・本能からくるものですので、無くしよう がありません。
現状に不満がない生活なのに、他人から変えろと言われてうれしく思う人はあまりいません。
禁煙に抵抗する人も同じです。
タバコに依存している人はもちろん、禁煙の流れに反感を持っている人・喫煙者に吹く逆風 に同情している人などもいます。

禁煙がどんなに良いと聞かされても、喫煙者は不安でしょうがありません。
禁煙が簡単だなんて言ってもそんな簡単に出来りゃ世話ないよ。
あのイライラやモヤモヤに 負けないなんて無理だ。
そんなにうまくいくはずがない。
そういった不安もあり、禁煙運動にも反対したりします。
そうした反対や不満の声は押さえつけたり無視したりしてはいけません。
他人である会社が勝手に変えろというわけですから、不満に対し共感をもって社員の考えを 聞き、不安を受け止めた上で、それが杞憂であること、素晴らしい未来が得られることを禁 煙ニュースや研修会などで丁寧に説明して、不安を解消してあげる必要があります。
反対者の中には表立ってあるいは目に見えない形で攻撃してくる人もいます。

そうした動きで禁煙運動が行き詰まらないようにするうえでも、プロジェクトメンバーの中 の個人が批判にさらされたり孤立しないようにするうえでも、日ごろからのそうした丁寧な 対応が重要です。
人は、権威がある人、尊敬されている人、好きな相手から言われると受け入れやすくなり、 より効果的ですので、トップや幹部社員には、反対しそうな人やキーポイントになる人、喫 煙社員に出来るだけ話しかけるようにしてもらってください。
また、先に禁煙を始めた先輩たちの経験とサポートも受け入れやすいものですので、元喫煙 者である禁煙メンターには大いに活躍していただきたいものです。

女性特有のサポートを
ある調査によると女性の禁煙理由は第 1 位自分の健康のため、第 2 位タバコ代が高いで、こ こまでは男性と同じです。
女性の場合の第 3 位は自分の口臭や煙のニオイが気になるで、これは男性の場合は第 5 位で すので、女性は自分から出るタバコの匂いを気にしていることが分かります。

反対に女性に禁煙をためらわせる理由もあります。
それは禁煙後の体重増加への恐れです。
一般的には平均で数 Kg の体重増加が報告されていますので、根拠のないものではありませ ん。
ですので、食事指導や運動指導のプログラムを用意しておいた方が女性は安心すると思いま す。

禁煙開始直後の 3 週間は、食事を減らすなどの余計なストレスを与えない方がいいので、体 重のことは考えないように指導し、3 週間を過ぎて離脱症状が治まってから食事指導や運動 指導のプログラムを提供するようにしましょう。
なお、ニコチンは血管狭窄を引き起こしますので、毛細血管が詰まることで皮膚に栄養や酸 素が届かず肌荒れや老け顔、くすみの原因になっています。
禁煙によりそうした症状が改善 することも教えて上げてください。

ちょっと一息 小話コーナー キリスト教文化の黄昏
この世の全ては、大きな流れが終わるとき黄昏がやってきます。
キリスト教はエルサレムの地で生まれ、なぜか西に広がり始めました。
エルサレムから西へ広がり、ローマで覇権を獲得しキリスト教文化はローマを中心にして繁 栄しました。

その後さらに西に広がりドーバー海峡を渡ったキリスト教文化は、イギリスで産業革命を生 み、キリスト教文化の総本山となったイギリスに世界一の繁栄をもたらし、自らも世界の覇 者となりました。

さらに西に広がり広い広い大西洋を渡ったキリスト教文化はアメリカを、イギリスをも上回 るキリスト教文化の総本山とし、アメリカを世界の絶対覇者にし、「アメリカ」という外套 をまとったキリスト教文化はさらに一層強大となりました。

キリスト教文化はさらに西に覇権を広げ、そこにある国家をアメリカ以上の強大な総本山と してさらなる覇権を打ち立てると思われました。
広い太平洋を西に渡った先にはアメリカよりもさらに多くの人口を抱える国々があるので すから。

ですがキリスト教文化は地球を半周したところで力尽き、太平洋の西岸にたどり着くことは 出来ませんでした。
そして今まさに海に飲みこまれ黄昏の中に消えて行こうとしています。


3章ー1 達成後の継続が重要です

盛大に祝おう
あなたの会社は全社員禁煙・卒煙を達成しました。
これで喫煙していた社員全員が健康を取り戻せました。
会社は社員の安全と健康を守るという会社の責任を果たすことが出来ました。
そうした成果、運動に一区切りがついたことをみんなで確認する機会を作りましょう。
禁煙運動に参加した全ての社員や禁煙をサポートしてくれた社員の家族を称えて、慰労し、 喜びを共有してください。

そして全社員がタバコを吸わない人になった事を社外に大きく発信しましょう。
それは健康な企業というアピールになり、社員の健康を守るという企業ポリシーの発信にな り企業のイメージをアップし、採用にも有利に働きます。
そうした事を社外に発信するのは、それ自体が社員の再喫煙を防止することにもなります。
全社員禁煙達成のイベントが再喫煙防止運動のスタート日です。
全社員禁煙達成の喜びを禁煙継続のエネルギーにしてください。

いつまで経っても禁煙中
喫煙者は残念ながら決して非喫煙者にはなれません。
喫煙者はいつまで経っても禁煙継続中の人なのです。

継続的な喫煙によって作られた脳内報酬系の回路は一度完成すると一生消えません。
それは、若いころ自転車に乗っていた人が、電車や自動車移動専門になって 40 年間自転車 に乗っていなくてもすぐ自転車を漕げるのと似ています。
しかもニコチンは「報酬提示の即時性」と「間欠強化」という性質を持っています。
このためニコチンの摂取行動・喫煙衝動は非常に強化され、覚せい剤や他の麻薬以上に止め にくい依存性薬物となっているのです。

何かのきっかけで、遊びで 1 本だけ吸ったら、立派な喫煙常習者に逆戻りします。
久しぶりのタバコはひどくマズいものと感じます。これなら大丈夫だと思うのは大間違いで す。
たった1本吸っただけで、ほぼ確実に 2 本目に手を出しすぐに自分でタバコを買いに行きま す。
たった1本吸っただけで、2 本目を吸わないようにするためには、以前に禁煙に成功したの と同じ努力が必要となります。

禁煙を達成した人に喫煙をそそのかすのは、どんなに軽い気持ちであっても犯罪的な行為で す。
禁煙継続中の人も悪友にどんなにそそのかされても、自分がタバコを克服したことを確かめ ようなどと決して思わないでください。
改めて言います、喫煙者は決して非喫煙者になることはありません。

喫煙者は禁煙して何年たっても死ぬまで「禁煙継続中の人」なのです。
ですから 1 本と言えども決して手を出してはいけません。
禁煙を継続している人にはもうタバコは必要ありません。
企業は禁煙継続中の社員が退職するまで禁煙を続けるようサポートし続けてあげてくださ い。

新たなフェーズへ
全社員禁煙を達成した、バンザイやったーで終われればこんなうれしいことはありません。
喫煙はほんの小さな何かのきっかけでフラッシュバックのように再開してしまうことがあ ります。
再喫煙を防止するためのサポートがされていない場合は最悪 9 割の人が再喫煙すると言わ れています。

ですから社員が再喫煙しない体制、再喫煙した時にサポートする体制、再喫煙防止計画をあ らかじめ立てておく必要があります。
ですがそれは全社員禁煙運動で十分なサポート経験を蓄積しているので、その体制を解除す ることなく、再喫煙防止運動という新しいステージに対応するように少しだけ修正すればい いのですから簡単です。

再喫煙を隠すような風土を作らないように気をつけてください。
それは再喫煙してしまった社員をものすごく惨めな気持ちにさせてしまいます。
ですから再喫煙してしまった本人やそれを支えてくれた禁煙メンターなどにペナルティを 与えないようにしてください。(健康手当分の減額をあらかじめ表明していた場合はそれを 除く)
あらかじめ再挑戦をサポートする体制が整っていることを社内に周知しましょう。
そして再喫煙してしまったら必ず申告させ再挑戦をサポートする体制をしっかりと発動さ せましょう。

過去に喫煙者だった社員が定年などで全員が退職するまで支え続けてください。
社員の安全と健康を守り、社員が生き生きと働ける職場を作り続けるそんな企業であり続け てください。

資料

喫煙の健康影響に関する検討会報告書抜粋(平成 28 年 8 月 厚生労働省) 喫煙の経済的影響には,負の影響(医療費支出など)と正の影響(たばこ産業,たばこ税お よび関連他産業への影響)双方の観点がある。  たばこによる負の影響は,関連疾患の医療費のみならず,施設環境面への影響や介護・生産
性損失など多岐にわたる。 医療経済研究機構の試算では,損失の総額は 4.3 兆円にのぼる。ただし生産性損失や介護費 は推計方法による不確実性が大きく,今後の精緻な研究が待たれる。  正の影響も,たばこそのものの売上げなどの直接的効果だけでなく,他産業にもたらす間接 的効果も組み込む必要がある。ただしたばこ産業の間接影響は他産業よりも小さく,産業連 関表を用いた分析でもその総額は 2.8 兆円にとどまり,全体では負の影響が上回ると示唆 されている。 また,職場のたばこ対策に関して禁煙と分煙を比較した研究でも,禁煙による便益が分煙の それを上回った。

日本人における喫煙者本人への影響(能動喫煙)として,喫煙との関連について「科学的証 拠は,因果関係を推定するのに十分である」と判定された疾患等は,がんでは,肺,口腔・ 咽頭,喉頭,鼻腔・副鼻腔,食道,胃,肝,膵,膀胱,および子宮頸部のがん,肺がん患者 の生命予後悪化,がん患者の二次がん罹患,およびかぎたばこによる発がんであった。 循環器疾患では,虚血性心疾患,脳卒中,腹部大動脈瘤,および末梢動脈硬化症であった。
呼吸器疾患では,慢性閉塞性肺疾患(COPD),呼吸機能低下,および結核死亡であった。 妊婦の能動喫煙では,早産,低出生体重・胎児発育遅延,および乳幼児突然死症候群(SIDS) であり,その他の疾患等では, 2 型糖尿病の発症,歯周病,およびニコチン依存症であった。  受動喫煙との関連について「科学的証拠は,因果関係を推定するのに十分である」と判定さ れた疾患等は,成人の慢性疾患では,肺がん,虚血性心疾患,および脳卒中であった。 呼吸器への急性影響では,臭気・不快感および鼻の刺激感であった。 小児の受動喫煙による影響では,喘息の既往,および乳幼児突然死症候群(SIDS)であった。  未成年者の喫煙に関して,「科学的証拠は,喫煙開始年齢が若いこととの因果関係を推定す るのに十分である」と判定されたのは,全死因死亡,がん死亡,循環器疾患死亡,およびが ん罹患のリスク増加であった。

現在のたばこ製品は,ニコチンによる喫煙者を長期的に使用継続させる「依存性」とヒトの 健康に悪影響を与える「有害性」に加えて,メンソールなどの添加物による「魅惑性」を有 する。 わが国のたばこ販売量のほとんどは紙巻たばこであり,喫煙によって発生する主流煙の粒子 成分が約 4,300 種類,ガス成分が約 1,000 種類の合計約 5,300 種類と報告されている。 これらの化学物質には,発がん性があると報告される物質も約 70 種類存在している。 これらの化学物質は,喫煙により速やかに肺に到達し,血液を通じて全身の臓器に運ばれる。
たばこ煙に含まれる発がん性物質は,DNA の損傷等を通じてがんの原因となる。 たばこ煙への曝露は,動脈硬化や血栓形成傾向の促進等を通じて虚血性心疾患や脳卒中など の循環器疾患につながる。 たばこ煙に含まれる物質は,肺の組織に炎症等を引き起こし,永続的な呼吸機能の低下の原 因となる。

ニコチン依存症 世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第 10 版(ICD-10)にはたばこの依存症候群が,米国精 神医学会診断基準第 5 版(DSM-5)にはたばこの使用障害が疾患分類されており,喫煙は一 定の割合でそれら疾患を引き起こす。 ニコチンないしたばこは,使用中止の困難さ,耐性,離脱において,ヘロイン,コカイン, アルコールなど一般的な依存性物質と同様の特徴や強度を有する。ニコチン依存症のメカニ ズムには,ニコチンが脳の報酬回路に作用し,快感や多幸感を引き起こすドパミンを過剰に 分泌させることが深く関係している。喫煙とニコチン依存症との関連について,「科学的証 拠は,因果関係を推定するのに十分である」と判定された。

誤飲事故  
小児のたばこの誤飲事故は,長期的には減少傾向にあるが,依然として小児における家庭用 品等の誤飲事故の主要な原因の一つである。 誤飲事故の背景因子は,家庭内の喫煙者の数が多いこと,居間,台所,コタツの上などにた ばこや灰皿が置いてある,またはそこで喫煙することがあることなどである。 家庭内にたばこ製品があることが,小児のたばこの誤飲事故と関連性があることは明らかで ある。

喫煙の社会的格差  所得,学歴,職業等に関連した社会経済的要因(socioeconomic status: SES)によって喫 煙率が異なり,これは喫煙の社会的格差と呼ばれている。 低 SES 者は,喫煙率が高く,喫煙を開始しやすく,禁煙を行いにくく,受動喫煙に曝露さ れやすいことは,多くの国に共通する傾向である。 日本でも,公的統計および個別な研究において,低 SES と喫煙の関連が確認されている。 喫煙の流行モデルに従うと,集団全体の喫煙率の低下に伴い,喫煙は低 SES 者の特徴とな り,喫煙の社会的格差は拡大し,これは今日の日本に当てはまる。 たばこ対策はその方法により,喫煙の社会的格差を拡大させることもありうる。 たばこ対策を行うにあたっては,低 SES 者を重視した取り組み,喫煙の社会的格差のモニタ リングなど,喫煙の社会的格差への考慮が必要である。

受動喫煙防止の法制化 わが国では平成 15(2003)年の健康増進法の制定及び 平成 27(2015)年の労働安 全衛生法の一部改正により受動喫煙を防止することが努力義務 とされ,学校や病院,官公庁などの禁煙化が進んできたが,喫煙室を設置してもたばこ煙の 漏れが防止できないことや,喫煙室の清掃や喫煙可能な店舗での接客など従業員の受動喫煙 問題はい まだ残っている。 平成 26(2014)年までに,49 か国で屋内を全面禁煙とする罰則のある法規制が施行されて いる。 法律により屋内を全面禁煙とした国などでは,国民の喫煙関連疾患による入院リスクが減少 したこと,一般の職場だけでなくレストラン,バー(居酒屋等)まで全面禁煙化が広がって いるほど入院リスクの減少の度合いが大きかったことが報告されている。  国民の喫煙関連疾患を防止するために,「FCTC 第8条履行のためのガイドライン」をはじめ, WHO 等の各種文書に記載されているように,わが国でも喫煙室を設置することなく屋内を 100%禁煙化を目指すべきである。

ちょっと一息 小話コーナー オシドリ夫婦は浮気夫婦 
オシドリ夫婦と聞くととっても仲のいい夫婦で浮気なんかする印象はありません。
でも鳥の夫婦、主にメスですが、は実に勤勉に浮気をするのです。実に勤勉にです。
以下は長谷川眞理子総合研究大学院大学学長という行動生態学、特に動物の繁殖行動・繁殖戦略に造詣の深い先生の著作・講義で知ったことです。

先生はある島の鳥の巣の卵や雛の遺伝子を調べられたそうです。
するとなんと巣にある卵の 3 分の 2 は別のオスの卵だったのです。
驚いた先生は営巣中の番いの行動を調べました。
するとオスが巣作りしたり巣で卵を温めている間にメスは餌を探すだけでなく、イケメンの オスを探していました。
イケメンのオスを見つけるとメスはイケメンにお尻を突き出して交尾をねだったのです。
営巣中のメスは実に勤勉にイケメンを探しては交尾をおねだりしていたそうです。
つまりメスとしては、巣を作ったり雛にエサを運ばせるオスは最悪ブサイクでもいい、でも 雛はイケメン・美鳥になってほしいという、オスにとっては涙が出る繁殖戦略をとっていた のです。

色々な鳥は去年の番いが今年も番いになる事が多いです。
その理由はもうお分かりですね、メスとしては去年はこのオスはきちんと十分な量の餌を運 んできた。
別のオスを探すのもめんどい、やっと良さそうなのが見つかってもそいつが十分 な量のエサをきちんと運んでくる保証はない。
ならば今年もこいつに餌を持ってこさせて、大事な雛はイケメンから精子をもらってイケメ ン・美鳥に育てよう・・・だそうです。
いやあご同輩いえご同鳥さん。オスは悲しいですなあ。

話は変わってニホンザル。
ニホンザルのメスは群れのオス全匹と交尾をしようと頑張ります。実に頑張ります。
オスの前に、発情を示す真っ赤なお尻、オスにとって魅力的なそれを見せて交尾してくれる まで粘るそうです。粘るんです。
そして子供が生まれると、交尾したオスの前に行きこうねだるそうです「この子はあなたの 子よ餌を分けて」交尾したオス全匹にそんな感じに言って回るそうです。やり逃げは許しま せん。

話は変わってニンゲン。
ニンゲンのメスはサルとは反対に受精可能期間を隠したそうです。
なぜそんなことをするのでしょうか。
サルと違ってニンゲンは、子を何人か産んだ場合は育児期間が 10 年以上もあるので、その 間安定して餌を運んでくるオスがメスとしては必要です。
ですから安定して何回も交尾しないと受精しないように思わせて、何十年もの長きにわたっ て自分に十分な餌を運んでくるオスかどうかを選別する戦略をとったらしいのです。

メスは一生餌を持ってくるオスを確保したら、鳥と同じでイケメンや美女の子供が欲しくなるのでしょうか。
それは怖くて考えたくありません。
なんか、タバコの害なんて怖くて聞きたくない喫煙者の気持ちが分かるような、悲しい気分です。
以上、長谷川眞理子先生の著作・講義から感じたお話でした。



参考文献

「リセット禁煙」(磯村毅著 PHP 出版)
 「リセット禁煙のすすめ」(磯村毅著 東京六法出版)
 「禁煙セラピー」他多数(アレン・カー著 KK ロングセラーズ)
「禁煙学」(日本禁煙学会編 南山堂)
他 (作業中)

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